第27話  エルフィンとハンネス 夢は語りかける②

 相変わらずエルフィンは、悪夢に悩まされ続けていた。

 そしてその日見た夢は、今まで見たどの夢よりも哀しく、エルフィンの心を引き裂いた。

 差し出されたふたつの手。ひとつはマルデク総統ユリウスの手。そしてもうひとつは愛するハンネスの手。


 そして自分でも信じられないことなのだが、夢の中でエルフィンが涙を流しながら

選ぶ手は、マルデク総統ユリウスの手なのだ。


 そして心が引き裂かれそうなほど、哀しくつらいのは、その後のハンネスの変貌だった。


 あの優しいハンネスが、美しくも哀しい鬼の形相の戦神へと変わるのだが、しかし夢の中に母ヨシュアが姿を現れし、エルフィンに優しく告げた。

 

「エルフィン、これでいいのよ。

 これでお前の役目は終わったの。

 滅びの子が、戦う心に目覚め戦神へと生まれ変わった。

 この光と闇の戦いに終止符を打つためにこの宇宙は新しい戦神が必要だったの。

 さあ、お眠りなさい。

 もう、苦しまなくてもいいのよ。

 私のところへいらっしゃい」


 エルフィンはジャド師のもとを訪れ、何も言わず、ただ泣いた。

 しかしひとしきり泣いた後、エルフィンは言った。


「ジャド師さま、予知夢や予言というものは絶対、変えられないものなのですか?」


 その問いにに対してジャド師は、

「絶対変えられないものだとは、私は思っていない。

 お前がどんな夢を見たのか、私は知らないが、予知夢というものは、未来からの一種の警告だ。そうならないように、最善を尽くせと言う警告だよ」

と言った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る