第5話 蒼き炎エルフィン 第1章 エルフィンと医官ハンネス

 帝国で屈指の医官であるハンネスは、血だらけのエルフィンの体の治療を行いながら、友エルフィンに言った。

 「なぜフォースを防御に使わなかった」


 その言葉に対して対してエルフィンは、何も答えなかった。


 「いづれ総統とぶつかるだろうことは、予測していたが、こんな・・・、

くだらないことでぶつかるとわな」

と、呆れたようにエルフィンに言った。そして、しばらくエルフィンを黙って見ていたが、

 「失望したよ」

と少し怒りながらつぶやいた。


 それでもエルフィンは何も答えなかった。


 「なぜなんだ? お前の色恋ざたに、口をはさむ気はないが、志を捨ててまで、護らなければならない相手なのか?」


 「そうだ・・・」

と、エルフィンはポツリと言った。


 その言葉にハンネスは絶句した。


 「美女だったそうだが、かなり、年上のようだったと聞いたぞ」


 「そんなことまで、伝わっているのか・・・。だったらなおさら、本当のことは言えない」


 「このバカ野郎! 心配させるな!心配で心臓が止まりそうだったんだぞ」

とハンネスはまだ怒ってはいたが、治療後のエルフィンの体をほれぼれと見つめながら、


 「傷ひとつない! 相変わらず、美しい!」

とつぶやき、

 「感謝しろよ。俺だから、体に傷ひとつ残さず治療できたんだ」

と自分の実力に満足しながら、エルフィンに言った。


 ハンネスはいつも柔らかい風のようにエルフィンを包み、自分のやり方でエルフィンを守ってきた。

 エルフィンも、ハンネスあってこその自分であることを十分知っていた。

 エルフィンが捨ててきたものすべてを、ハンネスはもっていた。

 ハンネスと一緒にいるときだけ、エルフィンはその心を休めることができた。

 ハンネスは、今は失われてしまった幻の星「シャンバラ」出身の医官だった。  

 最後の大神官ユダと短い期間ではあったが、実際に行動を共にしたことがあった。



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