第4話 「蒼き炎エルフィン」第1章 帝国軍マルデク総統とエルフィン

 「エルフィンさま、総統がお呼びです。先ほどから、神殿の謁見の間でお待ちになっています」


 戻ったばかりのエルフィンに、総統からの使者が含み笑いを浮かべて告げた。

 イヤな奴だと思った。

 この総統からの使いは、エルフィンよりも年上である。

 身分は低いが長年、総統に仕えてきたことでそれなりの信用を得ているし、総統の裏の部分も良く知っている。

 エルフィンの異例のスピード出世についても、裏事情をかなり知っていた。

 エルフィンは目的のためには、手段を択ばない。普通のものならば当然、躊躇するようなことでも、目的実現に必要とあらば、どんなことでも我慢できたし、してきた。

 今回のことで、総統が怒るであろうことも分かっていたし、そして総統がどんな行動に出るかも、十分予測していた。

 総統は、エルフィンの降格はもちろん、罰を与えるはずだ。

 最近、総統の支配から何かと逃れようとするエルフィンを、苦々しく思っていた総統にとって、これは絶好のチャンスだった。

 総統にとってエルフィンは、自分の権力を増すための駒に過ぎなかったし、お気に入りのペットのようなものだと信じて疑わなかった。

 ペットも部下も主人にたいして従順でなけらばならない。その原則をエルフィンが破った以上、罰を与えなければならない。

 どのような罰をエルフィンに与えようか?

 それは総統にとって、至福の喜びだった。

 最近のエルフィンは、あの敵軍の英雄ルシファーやミカエルと並び称されるほどの

英雄になりつつあったのだが、その英雄を支配しているのは自分であることを、はっきりと皆に示す最高の機会だった。


 総統は自分でまだ気づいていなかったが、エルフィンに対する感情は支配欲以上のものが混じっていた。だからこそ、今回のエルフィンの行動は許せなかった。

 エルフィンがどんな言い訳をしようと、もうとう初めから許すつもりはない。

 しかしエルフィンを、手放す気もなかった。

 二度と裏切らないように、教育しなおさなければならない。最高の罰とともに、その心にくさびを打たなければ・・・


 総統はこれから始まる血も混じるであろうゲームに心が沸き立っていた。







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