第6話 蒼き炎エルフィン 第1章 帝国軍情報局長官オスカー・フォン・ブラウンと総統 

 「あやつめ・・・」


 総統自らの拷問にもじっと耐え、血まみれになってもついに口を割らなかったエルフィンに、総統はかなり苛立っていた。

 口を割るまで、このままでは、拷問を続けなければならなくなる。

それではエルフィンが死んでしまうかもしれない。

 それは美しく高価な宝を自ら壊し、永遠に失うことと同じだった。

 それは総統の望むことではなかった。


「あやつめ、命乞いもせんとは、可愛げないやつだ」

 自分が始めたゲームではあったが、総統は落としどころを見つけ出せず、困っていた。そのような時に、

「総統閣下、情報局長官のフォン・ブラウンが、謁見を願い出ておりますが、どうされますか?」

と部下が告げたのだ。


 「今回のエルフィン様の件について、急ぎお伝えしなければならないことがあると

申しております」

 オスカー・フォン・ブラウンは、元老院の重鎮を父親に持つ、帝国でも有数の大貴族の息子だった。

 総統は無感情のまま、

「良い、通せ」

と部下に伝えた。


 フォン・ブラウンも美しい若者ではあったが、総統の好みではなかった。

 総統はあまり期待せずに、フォン・ブラウンの情報を聞いた。  


 「申し上げるのが遅れましたが、エルフィン将校は私の要請を受け、地球へ秘密裏に潜入したのです」

とオスカー・フォン・ブラウンは総統に告げた。そして、

「私は以前から、あの星の異常な動きに注目して参りました」

と言った。


 「どのような異常がみられたと?」


 「辺境の星であるにも関わらず、あの星を守る宇宙連合軍将校は、宇宙連合軍の四大戦士ひとりであるあのヨハネ戦士でした。あまりに異常な人事です。

 それで私は密かに密偵を送っていたのですが、最近、大きな動きがあったと報告があったのです」


 「どのような動きだ?」


 「驚いたことに、あのルシファーと統治神<シ>の右腕ミカエルまでも、あの星にいるというのです」 


 「なんだと?」


 「密偵は実際にあの二人の戦士と戦ったことがなかったので、本人かどうかを確かめるために、実際に戦った経験のある、エルフィンを送ったのです」


 総統は言葉にも、表情にも出さなかったが、安堵していた。

 これでエルフィンの拷問をしなくて済む。まだ不明な点はあるが、それはどうでも良いことにしよう。エルフィンが総統の言うことを聞き、素直に従えば、総統は許す決意を、すでにしていた。


 償わせ方は、色々ある。

 拷問よりも別の償い方をさせるほうが、総統は好んだ。

 今回はエルフィンも拒めない。

 総統は嬉しそうな笑みをうかべ、

「ところで、ハンネス医官の治療は、終わったようだったか?」

と部下の者に聞いた。


「ハンネス医官が言うには、まだだそうです」


「いつまでかかると言っていた?」


「数日は絶対安静だと、申しておりました」







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