第175話 火山!

 エレミヤ城からチャキ山を目指して飛び立ったマイクとリンダは、半刻程度の飛翔の末、現地へとたどり着いていた。


「うっ、すごいな」


 巨大なチャキ山は、山頂からドロドロとした溶岩と黒い煙が噴き出ている。中庭で遭遇した、長い地震は火山の噴火が原因だったのだろうか。砂漠の国を包んでいる暑さとは違った熱気が辺り一帯を包み、その気温の高さでマイクとリンダは汗をかいた。


「マイク……。今ここでまた大きな噴火が起きれば、わたしたちは飲み込まれて死ぬぞ」

「う、うん……。でも……逃げ遅れている人がいないか、空から探そう」


 マイクとリンダは目をこらして足元を探した。いないことを確認出来たら、早急にこの山から立ち去らなければ自分たちの身が危ないかもしれない。


「はぁ……熱い……」


 しかしリンダが、黒い煙の中にうっすらと影を見つけた。


「おいマイク。あそこを見ろ。何かがいるぞ」


 リンダは煙の中で蠢いている影を指差した。


「え? 人?」

「いや、あれは――」


 リンダが指を差した先にいたのは――ドラゴンだった。

 風竜の五倍ほどの大きさで、全身を赤い鱗に覆われており、口からは火を吐いている。


「えっ! ド、ドラゴン! あんな赤い奴、はじめてみた!」


 風竜と違って、いかにも凶暴そうな相貌をしているドラゴンを見て、マイクは震えた。


「こ、この噴火や地震は……もしかして、あいつのせい?」

「もしくは気候変動のせいであいつが目覚めたか……いずれにせよ」


 ドラゴンは、ゆっくりと歩いていた。


「あのドラゴンを放っておくのはヤバいな。見ろ、マイク。ドラゴンが歩いている先の先……」

「あ……」


 ドラゴンの歩いているずっと先を空から見てみると、一つ、集落があった。


「あ、あそこはイグニス村だ。知り合いのおじいちゃんやおばあちゃんが住んでるんだ!」

「村を目指して真っ直ぐ歩いてる感じだな。あのドラゴン、腹をすかせているのか」

「そ、そんなことはどうでもいいよ! はやくあのドラゴンを止めないと、村が大変なことになっちゃう!」


 イグニス村を守るためには、赤いドラゴンを止めなければならない。


「行くぞ、マイク!」

「うん!」


 しかし見るからに凶暴そうな奴に、勝てるのか、勝つ方法があるのか、わからないまま少年と少女は赤いドラゴンに近付いていった。



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