第174話 地震!
リートゥスとの話が終わり解放されたリンダは、風竜の様子を見に中庭へ向かうと、風竜は知らない少年と一緒にいた。
風竜は少年が持ってきたエサを食べ終わり、オケに入れられた水を飲んでいるところだった。
「あ!」
風竜とともにいた少年はリンダに気が付くと挨拶した。
「はじめまして。ボクはマイクっていいます」
リンダも歩み寄り、マイクと名乗った少年に挨拶し返した。
「わたしの名前はリンダ」
「よろしく、リンダ。ところで、アリア姉ちゃんを知らない? このドラゴンの飼い主の、やさしそうな雰囲気の女の子なんだけど」
「いや、アリアはいない。そのドラゴンに、わたしと仲間たちが乗ってきたんだ」
「え、そうなの?」
マイクは驚いた。そして気になっていることをリンダに聞いた。
「ねえ、リンダ、リュート兄ちゃんには会った? 元気にしてた?」
リンダはリュウトの顔を思い浮かべた。はじめに思い浮かんだのは、人の顔の上で涙と鼻水をこぼしてきたときの泣き顔だった。
「ああ。元気だったよ」
「そうか、よかった!」
マイクの顔に安堵の色が広がった。
「心配なんだ。リュート兄ちゃんって、あんな感じだから……」
「頼りないからな」
マイクがあえて言葉にしなかったことをリンダはあえて言葉にした。
「そうなんだよ! 兄ちゃんは戦士って感じじゃないよね」
するとそのとき、突然風竜が鳴いた。
「えっ!」
「なんだ?」
風竜の一声の三秒後、先ほどよりも大きな揺れが起こった。
「じ、地震だっ!」
地震は長く続いた。風竜は翼を広げて、マイクとリンダを守った。
「う、すごいな……一分近く続いてるぞ」
ようやく地震が収まると、風竜は翼をたたんだ。
「ありがとう、風竜」
「ありがとう」
マイクとリンダが風竜に謝辞を伝えていると、中庭近くの廊下に出ていたリートゥスの元へ、同じく暁の四天王で、参謀のルクソールが、長い三つ編みを揺らしながら走ってきた。
何事だろうとマイクとリンダは様子を見た。
「リートゥス!」
「なんだ、ルクソール。慌てるなんてお前らしくない」
「一大事だ!」
「何?」
「ここ最近頻繁に起きている地震の原因がわかったんだ」
「なんだと?」
「地震の原因は……チャキ山だ。チャキ山で巨大な音が発生すると、いつも地震が起こるらしい。地元の村民は数千年に一度の大噴火が起きる予兆かもしれないと言っている」
「噴火……?」
「その規模は、エレミヤ城まで飲み込むだろうと」
「なんだと……」
リートゥスは顔を蒼白させた。
「あの……今の話」
リートゥスとルクソールの会話に、マイクとリンダが割って入った。
「マイクにリンダ……。聞いていたのか」
マイクとリンダはこくりとうなずいた。
リートゥスはアゴに手を当てて考えた後、マイクたちに伝えた。
「わたしたちはこれからチャキ山へ調査に向かう。いいかい、この城でじっとしてるんだよ。わかったね!」
そう言うと、リートゥスはルクソールとともに走って行ってしまった。
「え、行っちゃった……」
リートゥスとルクソールがいなくなったのを見届けると、マイクは中庭にいる風竜の元まで走り、風竜の背中に飛び乗った。
「おいマイク!」
リンダは追いかけた。
「じっとしてろと言われたばかりじゃないか!」
「あれはリンダに言ってたんだよ。ボクは行くよ、ボクだって砂漠の国の戦士なんだ」
「マイクはまだ子どもじゃないか」
「一個二個上なくらいでいばるなよ、リンダ!」
「な、なんだと!」
リンダは無茶をしようとするマイクに腹が立ったが、少し考えて、冷静になった。
「マイク、お前、チャキ山の場所がわかるんだな」
「うん。行くのははじめてだけど」
「遠いのか?」
「まあまあ、ね」
「じゃあ風竜で行くしかないな……。風竜、子ども二人を乗せてチャキ山まで行けそうか?」
リンダの質問に風竜は咆哮をあげて答えた。
「え? リンダ、ついてくるの?」
「わたしの方が風竜さばきがうまいんだよ。行くぞマイク。砂漠の国の戦士には、国の有事には駆け付ける責務がある」
「リンダ! うん、そうだね。この地震で、困っている人がいるかもしれない。デシェルト様が留守の間は、ボクたちが主役だ!」
リンダも乗り込むと、風竜は空に浮かんだ。
「風竜頼むよ! いざ、チャキ山へ!」
マイクとリンダを乗せた風竜は、チャキ山を目指して飛んだ。
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