第144話 髪留めが落ちているの件
「どうしよう、ゼルド! ラミエルたちがいない!」
巨木から出てくると、アリアは待っているように告げたラミエルたちがいなくなっていることに気が付いた。
「くそ、あいつらまた勝手にどこかへ行ったのか。世話の焼ける奴らだな!」
「……森神様の祟り、なんてこと、ないよね……」
「お、アリアはそういうの気にするタイプなのか?」
「ち、違うけど!」
「というかなぁ、オレは神を目の前で見たことがないからなんとも言えないが、あの咆哮、どう聞いても魔物だったぞ。あの子どもたちをなんとか救いだしてやらないと危ない気がするが、とにかく今はいなくなった奴らを探さないと、だな」
アリアは辺りを見渡してから、ふと地面に目をやった。
「あ、わかった、ゼルド……。ラミエルたちが消えたのは神の祟りなんかじゃない。多分、連れ去られたんだ……」
「? 何故だ?」
「見て、これ……」
アリアは地面に落ちていたものをしゃがんで拾った。
「ラミエルの髪留めが落ちてる。すごく大事にしていたから、落とすなんてありえない。彼女はわたしたちに気付かせるために、わざと落としていったんだわ。風竜がいないということは、風竜を倒せるくらい強い敵ということ……」
「なん……だと……?」
アリアはこころの中でみんなの無事を祈った。
「風竜、もし、聞こえたら合図をして……」
アリアは背負っていた聖鳩琴を取り出し、吹いた。
音は、相変わらず出ない。
「ほーう? アリアは何をやっているのカナ?」
「お前は黙って見てろ」
「やれやれ、嫌われたモノです」
聖鳩琴の音色は、地下洞窟にいるリュウトには聞こえていた。
その音色を聞いて、リュウトは膝を抱えて震えていた。
「うっ、うっ……」
「リュート、泣いているのか……」
地上にいるアリアの演奏が止んでも、リュウトは涙を止められなかった。
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