第141話 灰色の魔道士の件
「お前は一体何者なんだ!」
アリアの影の中に潜むリュウトに、ゼルドが強い口調で尋ねると、天候が急激に荒れだし大粒の雨が降りだした。
「ククク……」
リュウトは、アリアの影の中からズブズブと音を立てながら出てきて、首や肩をポキポキと鳴らした。
「ふぅ~~~ん? まだ、本調子ではないカナ」
奇妙な言葉遣いをするリュウトからアリアを守るようにゼルドは大剣を構えた。
「アリア、気を付けろ!」
「う、うん!」
リュウトはニヤリと笑うと、パチリと指を鳴らした。すると、一瞬で、『本来の姿』に戻った。
リュウトに
「ククク……。アリアの中もなかなか良かったが、リュート様ほどではないカナ?」
ゼルドとアリアは、その男の風貌のあまりの異様さに面を食らっていた。
黒魔法を使う人間は、大抵濃い色のローブを
唇や長い爪には紅が塗られ、極彩色の魔道士のローブには、歩くとじゃらじゃらと音が鳴りそうな装飾がいくつもついている。
「ええ、ええ。お前は誰だって顔をしているので、自己紹介しましょう。ワタクシは『灰色の魔道士』、名はフェセク。伍の月の十日生まれ、愛と自由の使途、血の色は秘密でございます♡ 好きなものは脆く、儚く、美しいもの。どうぞ、よろしく」
灰色の魔道師フェセクと名乗る男はニッコリ笑って手を差し出した。
だが、ゼルドもアリアもあまりにも怪しすぎるこの男に差し出された手を握りたくはなかった。
「フェセクと言ったな。本物のリュートはどこにいる!」
悲しげな顔をしながら差し出した手を引っ込めたフェセクの背後で、雷鳴が轟いている。
「ふむ……。リュート様の居場所、ですかァ……。それは、ワタクシも知らないのです。だからアナタたちに近付いて、一緒に捜していたのですよ。途中、寄り道もさせましたカナ? まァ、それはどうでもいいですね♡ それはそうと、リュート様の姿に化けることができてこのワタクシ、幸せでございました。似ていましたでしょう?」
「いや、見た目は似ていたが……」
「偽物っぽさがかなりあったような……」
大雨を喜んで顔に受けるセフェクは、横から見ると形のいい高い鼻をくんくんとさせた。
「あれェエ~~~~! なァんだ……。近いようですよ、リュート様。ワタクシの身体がリュート様の気配を察して反応しているッ♡」
興奮するフェセクを見せないように、ゼルドはそっとアリアの目を隠した。
「さァ! 行きましょう、アナタたち。リュート様は、すぐソコです!」
「お、お前が仕切るのか……」
異様すぎる自称魔道士の怪人、フェセクの気ままな言動に、悪い予感しかしないゼルドとアリアだった――。
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