第134話 様子がおかしいリュウトさんの件

 悪夢を見せる少女、ルピエの強襲を退けた第二部隊は、仲間たちの遺体を埋葬した。すると、森の奥から怯えた目をしたリュウトが出てきたのだった――。


「リュウトさん!」


 アリアは真っ先に駆け寄って、抱きついた。


「リュウトさん!」

「あ……」


 リュウトは放心していた。


「どうしたの? 第一部隊は? シリウスは?」


 リュウトは、ぼんやりとくうを眺めていた。


「大丈夫? しっかりして、リュウトさん!」


 リュウトはようやくアリアの声が聞こえたようだった。


「……あの……君は、誰だったっけ」


 一同は、衝撃を受けた。


「えっ?」

「き、記憶喪失っ?」


 アリアは、またしても目に涙が浮かんでしまった。


「う、嘘……。リュウトさん、わたしは……アリアだよ」

「ごめん……ちょっと、よくわからないんだ」

「ひどいことが……あったのね? だから、記憶が……。リュウトさん、もう大丈夫、大丈夫だからね」


 そういって、アリアはもう一度リュウトをやさしく抱きしめた。


「ああ……アリアは、やさしいんだね」


 仲間たちは顔を見合わせた。


「嘘でしょ……リュート……」

「マジか」

「ぞな……」


 ラミエルは第二部隊の隊長であるゼルドに提案した。


「ねえ、ゼルド。急いで第一部隊に合流した方がいいんじゃない?」

「いや、リュートがこんな状態なんだ。もしかしたら、第一部隊はとっくに全滅してるかもしれない……」

「そ、そんな……」


 アリアはリュウトを離さなかった。


「そばにいるからね、リュウトさん……」

「あ……あ……」


 リュウトは、抱き締めるアリアを振り払おうとしていた。


「アリアぁあ~……離してくれっ!」

「えっ……」

「オレは行かなくちゃいけないんだ!」


 リュウトは暴れてアリアから逃れると、森の奥へ駆け出した。


「リュ、リュウトさーん!」

「ヤバい! リュートが逃げた! 精神がおかしくなってしまっているのか?」


 ゼルドは兵士たちに本隊に合流するまでここで待機するように告げると、「リュートと愉快な仲間たち」はリュウトを追いかけて森の中へ走っていった。

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