第133話 森の奥からリュウトさんの件
第二部隊が帝都に向けて行軍していると、森の中から現れたルピエという少女の悪夢を見させる特殊能力によって足止めされてしまった。
アリアとゼルドの協力と、ランプの中の世界から入手したピュアミスリルという宝石のおかげで、仲間たちは悪夢から目覚め、正気を取り戻した。
しかし、肝心のルピエは取り逃がしてしまった。
「とりあえず、第一部隊か本隊に合流しないと、な。もうほとんど、まともに戦える兵士が残っていない……」
第二部隊は、壊滅と言っていいほど、ほとんど兵力を残していなかった。
グラン帝国に踏み入れてすぐで、ここまでの兵力を失う羽目になるとは、誰も予想していなかった。
「わたしは……仲間を倒してしまった……」
亡くなった兵士たちを埋葬し、ガックリと肩を落とすアリアを、ゼルドが慰めた。
「自殺よりはずっといい」
「……」
アリアは唇を噛んだ。
「ルピエは必ず、倒す。強くなって、わたしが倒す」
ゼルドはうなずいた。
ゼルドは振り返って、またラミエルとケンカしているゾナゴンを見つめた。
「アリア、どう思う。ゾナゴンが闇の司祭、キルデールの名を口にしたこと……」
「ゼルド……それは、どういう意味……?」
「ゾナゴンは闇の魔法を司るドラゴンだったっけか?」
「と、本人は言っていたけど……」
「いくらなんでも、敵との遭遇がはやすぎる。しかし、オレたちの中で誰かが敵と繋がっているのだとしたら、説明はつく」
「ゼルド……それはもしかして、ゾナゴンを疑っているの……?」
「……」
アリアも、ゾナゴンを見つめた。
「闇を司るドラゴン……」
ゾナゴンが敵だということは、全く信じられないが、もし、ゾナゴンの目を通して闇の魔導師たちが見ているのだとしたら――。
「でも! ゾナゴンは仲間だよ」
「アリア……」
ゼルドは再びうなずいた。
「そうだな。今は確かめようがないし、どうにもならないからな。とりあえず、進もう。いや……進むしか、ない」
アリアたちの元に、ラミエルとゾナゴンが戻ってきた。
「二人で何の話をしていたぞなかー?」
「聞いてよ! ゾナゴンがまたあたしの悪口を言ってたの!」
「ははははは、あんなことがあったのにお前ら……」
すると、森の奥から、ガサガサという大きな音がした。
「何だ?」
「ぞな?」
「気を付けろ、アリア! 今ここで敵に出会ったらまずい!」
「ええ!」
しかし、仲間たちの目の前に現れたのは、野生動物でも、新たなる敵でもなく、意外な人物だった。
「え?」
「何で?」
「どうしたんだ? こんなところで」
意外な人物――それは、リュウトだった。
仲間たちの前に、ボロボロになったリュウトが姿を現した。
「リュウトさん!」
「リュート!」
「あ……」
リュウトは、怯えた目をしていた。
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