第125話 ドラゴン・レース閉幕の件

 ドラゴンレースは閉幕した。


「散々だったぞな……」

「何で参加したのか、もう意味が分からない」


 『リュートと愉快な仲間たち』は、賭けに大敗して、今日から無一文となった。

 リュウトがレースを棄権したことにより、砂漠の国での社会的名声も一瞬で消えた。


「本当に、何だったんだ『ドラゴン・レース』……」


 ラミエル、ゾナゴン、ゼルドはそれぞれにため息をついた。

 その中で、リュウトは無表情、リュウトの後ろを距離を取って歩いているがアリアだった。


「……」


 ラミエルたちはアリアを見ないようにしていた。トレイスに抱き着かれたリュウトを見て以降、アリアは魔物のような形相でいた。


「こわいぞなぁ、こわいぞなぁ……」

「ちょっ、ゾナゴン、アリアに聞かれたら……死ぬわよ」

「アリアがあそこまで怒るのは……。まずいぞ、すげーまずい」


 仲間たちは恐る恐るアリアの方を振り返った。


「どうしたの?」


 アリアはニッコリと笑った。


「ひっ!」

「ひえっ……」

「こわすぎぞな……」


 仲間たちは、アリアもこわかったが、リュウトもこわかった。

 なぜなら、元々は彼の金を、賭けで一瞬で溶かしてしまったのだから。

 しかし、起こったことは変えられない。

 仲間たちは、リュウトに謝るしかなかった。


「あのー、あのね。リュートさん」


 大戦犯であるラミエルがリュウトに丁重に謝ることにした。


「何、ラミエル……」

「レース、お疲れ様……」

「あー、うん……」

「リュート、落ち込んでる……?」

「いや、別に……」


 ゾナゴンはひそひそとゼルドの肩の上でつぶやいた。


「落ち込んでるぞな……」


 ラミエルは続けた。


「リュートは、頑張ったわよ! ね! あたしたち、リュートはすごいって思ってるんだから!」

「ラミエル……」

「だから、落ち込まないで聞いてね、あのー、その、あのー」

「?」

「お金を、賭けで、溶かしました」

「……」


 ラミエルは怒られると思って目を閉じた。

 しかし、リュウトは怒らなかった。


「ん? あー……別にいいんじゃない?」

「リュート、お、怒ってないの?」

「怒るほどのことでもないよ」


 仲間たちは、恐怖で引きつった。


「ヤバすぎない? 怒っても、怒ってもいいのよ、リュートさん。あのね、あたし、反省してる……珍しく……」

「別にいいよ。明日からまた、頑張ればいい……」


 後ろには笑顔のアリア、そして横には怒らないリュウト。

 仲間たちは、いつもとは違うリュウトとアリアに、恐怖を感じずにはいられなかった。


「あああ~! やめて、こわい、こわすぎるわーっ!」

「こわいぞなーっ! びえええん!」

「まじでなんだったんだ、ドラゴン・レース……」


 ドラゴン・レースは閉幕した。

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