第120話 さらに第四ポイントへの件

「アリアが、いない……」


 霧を抜けた先の第三ポイントで、リュウトは四女フィーアに負けてしまった。

 リュウトはシリウスを休ませていたので、アリアや他の参加者より遅いはずだった。霧の中で順位が逆転してしまったようだ。

 アリアは今もなお、霧の中を彷徨っているか、霧の中でトラブルがあったに違いない。


「アリアが、いない!」


 アリアが霧の中から出てくるのを待つべきか。アリアを探しに霧の中に戻るか、それとも先に進むべきか。マイクがいち早くゴールするリュウトを待っているはずだ。

 どれかを選ばなくてはいけない。


 第三ポイントを優勝したフィーアも困惑していた。


「アンナ姉さまとニコ姉さまも、霧の中でいつの間にかはぐれてしまった。だけど……」


 フィーアはリュウトの様子を見ている。

 リュウトが第四ポイントに進むのなら、彼女も進む気だ。


「アリアがまだ霧の中を彷徨っている、なんてことは……ない、と思う」


 リュウトは推測した。

 アリアには風竜がいる。

 霧なんて簡単に風で飛ばすことができるはずだ。

 だから今も霧の中にいるとすれば。


「何かトラブルがあったんだ」


 だけど、ここで戻ったら、フィーアに第四、五ポイントを先に取られてしまう。

 そうしたら、全ポイントで敗北が決まる。

 エレミヤ城で待つ仲間たちの期待を裏切ってしまう。


「くそっ、どうしたらいいんだ……」


 フィーアも困惑していた。


「トレイス姉さま、わたし、どうしたらいいの?」

「あんたバカね! アンナ姉さまとニコ姉さまは、すぐに追いつくわ。フィーアは先に行くのよ!」

「でも……」

「でもじゃない! フィーアも水の国の騎士でしょ!」

「姉さまは霧の中で聞こえた? ボーっていう低い音……あれ、もしかして――魔物……」

「聞こえたけれど……今は仲間を信じて進むべきときよ!」

「わ、わ、わかったわ、姉さま……!」


 フィーアはトレイスに強く言われて先に進みだした。

 フィーアが進んだら、リュウトも進むざるを得なくなる。


「そうだ、アリアを信じて……。アリアを信じて進まなければいけないんだ。アリアなら、きっと大丈夫だ……。マイクの期待のために、オレは進む!」


 飛び出したフィーアの後を追ってリュウトもシリウスを次のポイントへ進めたが、あの警笛の音を思い出すと、身震いが止まらなかった――。


 


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