ドラゴン・レース編

第112話 ドラゴン・レース概要の件

 砂漠の国の王都の市場の道のど真ん中で、買い物に来ていた『リュートと愉快な仲間たち』は囲まれていた。


「い、いきなり、なんだっ?」


 リュウトたちを取り囲んでいたのは砂漠の国の一般人。皆、取り囲んだリュウトたちを見てニヤニヤと笑っていた。

 一般人の中から、小太りの男性がヌッと姿を現した。


「くくく、待っていたよ、リュートくん……」

「なっ! あ、あなたは……!」


 小太りの男性は、商才のない商人、コンメルチャンだった。


「コ、コンメルチャンさん?」

「くっくっく……」

「あの~、怪しげな登場の仕方をしなくてもいいんですけど……。この人たちは何? オレたち買い物をしに来たんだよ。道を開けてよ」


 リュウトに続いて仲間たちも文句を言う。


「そうぞな! 道を開けるぞな~!」

「アリアとあたしの楽しいデートを邪魔しないでよねー」

「えっ、ラミエルとわたしってデート中だったの?」

「ははは! ラミエル、アリアからは全然相手にされてねーようだな!」

「ゼルドは黙ってなさい!」

「はいはい」


 コンメルチャンはリュートと愉快な仲間たちの相変わらずの仲の良さに一瞬困惑したが、話を続けた。


「リュートくんたちに、手伝ってもらいたいことがあるんじゃ!」

「手伝い? それなら普通に頼んでよ。変なことじゃなければ協力するよ」


 頼みごとのためにリュウトたちは取り囲まれたのかと思うと、変な気分だった。


「で、何?」

「ああ。実は……『ドラゴン・レース』をこの砂漠の国でも開催したいと思っているんじゃ!」


 コンメルチャンはドヤ顔を決めて言った。

 砂漠の国の一般人たちもニッコニコだ。


「ど……ドラゴン・レース?」


 リュウトは首をかしげた。


「おや、リュートくん。全く知らないのかい?」


 横にいたアリアが解説をはじめた。


「リュウトさん。ドラゴン・レースっていうのは、リト・レギア王国の竜騎士たちの伝統的な大会なんだよ。飛竜に乗り込んで、誰が一番先にゴールまでたどり着けるか競うスポーツなの。毎年一回行われていて、予選を勝ち抜いたチームが出場するんだよ」


 アリアの肩にゾナゴンが飛び乗った。


「リュウトがマギワンドへ向かっていた頃にちょうどやってたぞなね~」

「ああーっ。コンディスたちがなんか言ってた気がするけど、それのことだったのか~。いいなぁ、面白そうだ。うわーっ! オレも参加したかったな~!」


 リュウトたちが内輪で盛り上がっているとコンメルチャンが咳払いをした。


「うん。だからね、そのドラゴン・レースを、この砂漠の国ザントでもやらないかって話を、デシェルト王と掛け合って許可が下りたのだよ」

「えっ! 砂漠の国でドラゴン・レースを……?」

「そうじゃ。まあ、リュートくんたち以外のリト・レギア王国の竜騎士たちはおそらく誰も参加できないから、ドラゴン・レースと言えるかはわからんが、この近辺の国には空を飛ぶ生き物に乗って戦う騎士たちがいる。そこから参加者を募り、この横に長い砂漠の国で、空を飛ぶ者たちのレースをやろうという話なのだ!」

「へーっ!」

「リュートくんたちは参加が決まっているからね! なんていったって、竜騎士リュートくんとアリアくんは砂漠の民からとても人気なんだから! レースの看板としてお祭りを盛り上げてほしいのじゃ!」


 リュウトたちを取り囲んでいた砂漠の民たちが一斉に応援しだした。


「竜騎士リュート! 期待しているよ!」

「リュートが空を飛んでいるところを見ると元気が出るんだ! 派手に盛り上げてくれ!」

「もちろんアリアもな!」

「がんばれ! がんばれ!」


 リュウトは仲間たちと顔を見合わせた。


「いーんじゃない? 楽しそうじゃないの!」

「やるぞなやるぞな! 楽しくなってきたぞな~!」

「参加するんだったら優勝しろよな、リュート!」


 リュウトはうなずいた。


「お祭りか! みんなが楽しめることに協力できるならやりたいな!」

「ありがとう! リュートくん! そう言ってくれると思っていたよ! レースは来週の今日! 王城にドラゴンたちと一緒に集まるんじゃ。優勝賞品もゴージャスなものを用意してある。釣り大会のときのように、面白い伝説を作ってくれよ、リュートくん!」

「え~? 釣り大会みたいな? あれって面白い伝説なの? すっげー危なかったんだけど。まあ、楽しかったといえばそうかもな。うん! 楽しみになってきたよ! ドラゴン・レース!」


 こうして、リュウトたちはコンメルチャン主催の、砂漠の国の『ドラゴン・レース』に参加することになった。

 お祭りは来週だ。

 『リュートと愉快な仲間たち』は、『ドラゴン・レース』開幕に向けて気合を高めていった。

 

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