第108話 魔法の絨毯はいらんかね2の件
新しい絨毯を求めて朝からリュウトとアリアは買い物に出掛けた。
すると道端で、ナタリーが誰かと話しているのが見えた。
「ナタリーだ。……あれって……」
ナタリーは昨日リュウトたちが砂漠で出会った少年、マイクと話していた。
「ナタリーさんはすごい魔法使いって聞いたけど……」
「それは事実なんだけど、あなたの頼みはわたしじゃ叶えられないわ」
揉めているようだったので、リュウトたちはナタリーたちに話しかけた。
「ナタリー! どうしたの? それにマイクも」
「あら、リュート。ちょうどいいところに来たわ」
マイクは昨日コンメルチャンから買った絨毯を両腕に抱えていた。
「この子……この絨毯を『空飛ぶ絨毯』に変えてくれってお願いに来たの」
「偉大な魔法使いのナタリーさんならできないことはないって友だちのみんなが言ってた」
「それは誤解よ。魔導士はそこまで万能じゃないわ」
「でも……」
リュウトはマイクに尋ねた。
「マイク、どうして空飛ぶ絨毯がほしいんだ?」
「……」
マイクは震える口を開いた。
「空飛ぶ絨毯があれば……あの砂漠を越えていける……。空を飛べれば、タピーショ村で働いているお母さんの元へ行けるんだ!」
それを聞いて、アリアは胸が締め付けられる思いがした。
マイクはお母さんに会うために、強くなって砂漠を越えようとしていたのだ。
母親に会いに行きたいという気持ちは、アリアには痛いほどわかる。もっとも、アリアはもう叶えようがないのだが。
「リュウトさん……」
「うん……。アリアが言いたいこと、わかってるよ。シリウスに乗せれば、タピーショ村には行けると思う。マイクをお母さんのところまで送って行こう」
「待って! 違うのリュウトさん!」
「え?」
「この子は、魔法の絨毯に乗ってお母さんに会いに行きたいのよ」
「でも……」
「わたしに、いい考えがある! 耳を貸して、リュウトさん」
アリアはリュウトにだけそのアイデアを話した。
「ああ、アリア。それは素敵なアイデアだね!」
アリアたちはさっそく、そのアイデアを実現するために少年を呼んだ。
「マイク! 空を飛ぶ絨毯に乗る夢、叶えられるかもしれない!」
「えっ、本当に?」
マイクの顔に輝きが取り戻された。
「ああ。今から一緒に行こう! タピーショ村まで、お母さんに会いに!」
リュウトたちはマイクを連れて、砂漠に来ていた。
マイクとリュウトは昨日コンメルチャンから買った絨毯の上に座った。
「えー。コホン。それじゃあ風竜、お願いします」
風竜は咆哮した。
風竜は、風を操るドラゴンだ。
風竜の力を貸してもらい、風を操って絨毯を空に浮かび上がらせ、タピーショ村まで行こうというアイデアをアリアは思い付いた。
上位種のドラゴンにさせることではないような気がするが、アリアのやさしい思い付きを風竜が嫌がることはなかった。
風竜は風を操り、リュウトたちが乗った絨毯は宙に浮かび上がった。
「うわっ、うわわっ!」
マイクはリュウトにしがみついた。
絨毯の上は不安定だが、落ちそうになったらシリウスに拾ってもらうつもりだ。
「さあ! これで空飛ぶ絨毯の完成だ!」
「すごい! すごいよ! ありがとう、リュート、アリア、シリウス、風竜!」
「あっははは。みんなの名前をいっぺんに言ったね」
「これでお母さんに会いに行ける。嬉しい……やっと夢が叶うんだ!」
昨日に引き続き今日もマイク少年の力になることができて、リュウトとアリアは嬉しかった。
空飛ぶ絨毯と、後ろからアリアと風竜とシリウスが付き添い、タピーショ村まで一同は向かった。
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