第96話 砂漠の海で釣り大会!2の件
釣り大会に参加するため、釣り大会の集合場所、ダナギル砂漠の入り口にリュウトたちは向かった。
「ひょー。強そうな奴らがわんさかいるじゃねぇか!」
砂漠の入り口には、見るからに
冒険者たちはゼルドを見つけると口々に叫んだ。
「見ろ、ゼルドだっ!」
「凄腕の傭兵ゼルド!」
「暁の四天王の一人のゼルドが、何故ここに?」
「何故って、釣り大会に出るからに決まってるだろ」
ゼルドはやれやれといった風に頭をかいた。
「あそこで参加受付をしてるみたいね!」
ラミエルが指をさした先で、リュウトは懐かしい顔を見かけた。
「えっ! コンメルチャンさん?」
リュウトは受付に座っているコンメルチャンに声をかけた。
コンメルチャンはリュウトが学生だった頃に、セルピエンテ山で大蛇に襲われていたり、アルバイトをするきっかけを作った商才のない商人だ。
まさか砂漠の国でこんな懐かしい顔に出会えるとはリュウトは思っていなかった。
「リュートくん、だったかね?」
「そうですよ。何故こんなところにいるんですか? あなたはリト・レギアの人のはずじゃ……」
「ははは~。わたしは全国各地を旅する旅の商人だからね。どこにでも現れるのさ! 稼げることには常に目を光らせておかねばな。それが商人というものだ」
「はぁ~。またろくでもない目に付き合わされたらやだな~」
「うん? 何か言ったかね?」
「何も言ってないです!」
ラミエルたちも受付に来た。
「おじさん! わたしたちも参加するわよ!」
「参加費は一人一万ゴールドだ」
コンメルチャンはしれっと言った。
「えーっ! それは高すぎるよ!」
「百人以上参加者が集まらないとわたしだって赤字なんだよ! はぁ~。計算を間違えてしまった! あっ、そうそうリュートくん。君たちがオレンジジュースショップを開いて稼いだ金は、旅費や大会運営費ですべて消えたよ! 今ではわたしは超貧乏人さ! はっはっは!」
何が「はっはっは!」なのかリュウトとゾナゴンにはまるでわからなかった。
「リュート! このダメオヤジ、消していいぞな?」
「ゾナゴン。消す価値もないよ」
「ひどいなあ~!」
コンメルチャンは大笑いをしていた。全然
「リュート君たちには世話になったしね、大負けに負けて参加費は二人分でいいよ。あの二頭のドラゴンに乗って参加するんだろ?」
「まけてくれるの? いいところあるじゃん、コンメルチャンさん。はい、じゃあこれ。二万ゴールド」
リュウトは二万ゴールドをコンメルチャンに渡した。
そして、大会参加者名簿に『リュート』、『アリア』と名前を書いた。
「じゃあ、シリウスと風竜に乗り込んで釣り大会に参加したいところだけど……」
リュウトはラミエルを見てため息をついた。
「どうしたぞな?」
「ああ、リュートの考えてること、わかるぜ」
ゼルドもリュウトの考えがわかったようだ。
「いつものようにシリウスにオレ、ゾナゴン、ゼルド。風竜にアリア、ラミエルで行くと戦力差が出る。このダナギル砂漠には強いモンスターが出るという噂だから、戦力はなるべく均等にした方がいいと思う」
「オレはリュートの意見に賛成だな」
ゼルドはメンバーを見渡して、指名していった。
「シリウスにリュートとゾナゴン。風竜にお姫さんとオレで行こう」
自分の名前が挙がっていないことに気が付いたラミエルはすかさずゼルドに文句を言った。
「ちょっと待ってよゼルド。何であたしのことを入れてないのよ。あたしはどっちに行けばいいわけ?」
「あー……。リュート、どうする?」
ゼルドに振られて、リュウトは答えた。
「ラミエルは……オレの方に来てくれるか。それでバランスが取れるだろう」
「そうだな」
ラミエルは不満が爆発した。
「みんなして何よ! あたしのことお荷物だって言いたいのー!」
仲間は、誰も何も言わなかった。
釣り大会のルールは、日没までに参加者の中で一番大きな魔物を釣り上げた者が優勝というシンプルなものだ。
このダナギル砂漠は、魚型の魔物が多いらしい。
大会運営者のコンメルチャンが、リュウトとアリアそれぞれに釣竿と釣り
「こんなんで引っかかるなんて、魔物ってバカね~」
「ラミエルにバカと言われる魔物が可哀想ぞな」
「ゾナゴン! ケンカ売ってんだったら買うわよ!」
「ああ~。うるさいよ……」
釣り大会は時間制限があるし、ダナギル砂漠は広い。かたまって行動するよりも、二手に分かれた方が効率がいいということで、砂漠の西側をリュウトたちが、東側をアリアたちが狙うことにした。
「それじゃあ、優勝目指してそれぞれ頑張ろうぜ!」
「おーっ!」
かくして、砂漠の海での釣り大会が始まった。
リュウトは期待に胸を震わせていた。
勇者カレジャスとの修行でつけた力をはやく試したい。
強い相手や強い魔物と聞くとうずうずしてくる。
「昔のオレだったら、絶対にそんなこと言わないよなぁ」
リュウトはダナギル砂漠の西側にシリウスを飛ばしながらつぶやいた。
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