第95話 砂漠の海で釣り大会!1の件

 リュウトとアリアは二人で街へ買い物に来ていた。

 カレジャスと出会ってから、リュウトはそろそろ新しい武器に買い替えたいと思っていた。竜騎士団に入団したときに支給されたショートソードは使い勝手がいいが、もう少しレベルが上のもの扱ってみたくなった。


「カレジャスが使っていた勇者の剣みたいなのが欲しいけど、ぜいたく品だよな~。砂漠の国でいい仕事とかないかな~」

「わたしも国を出るとき、もう少し多めにお金を持っていった方がよかったかな……?」

「いや、ごめん。そういうことじゃないんだ。アリアに苦労はさせないよ」

「リュウトさん……」


 リュウトとアリアの会話を聞いていた武器屋の店主が二人をからかった。


「ガハハハッ! いい亭主じゃないか! お嬢さん!」

「てっ……」


 アリアは赤くなった。

 夫婦に見られているなんて、嬉しくて仕方ない。

 だがリュウトの方はまるで気にしていないようだった。


「剣を買いに来たけど、槍も欲しいよなぁ……。槍って剣より値が張るからなぁ。どうしようかなあ」


 そこへ店主が進み出た。


「今日は掘り出し物があるよ」

「掘り出し物?」

「ああ。いい槍が手に入ったんだ。その名も導雷槍どうらいそう。雷を操る魔物が現れたときに、攻撃を引き寄せてくれるんだ」

「雷の魔物か。しょっちゅう出くわすからなぁ」

「リュウトさん……それってラミエルのことを言って……」

「じゃあ、買った方がいいな! 二十五万ゴールドだ。」

「二十五万ゴールド! それだけあったら、装備を買い替えた方がいい気が……」

「うーん……」

「リュウトさん……。もしかして、迷ってる?」

「アリア」

「……」

「この槍、絶対に使い道があると思うんだ! 買ってもいいかな?」

「リュウトさんのお金だから、リュウトさんが決めればいいと思うよ」

「アリア、ありがとう! おっちゃん、オレ決めた! 買うよ! 導雷槍!」

「へっへっへ。まいどありっ!」


 結局、槍を一本買っただけで店を出た。


「槍を買ったぜ! やってやります! なーんちゃって、ははは!」

「……」

「……ま、でも、ホントにいい仕事探さないとな」


 元ゼルドの家、現リュウトたちの家まで帰ると、ラミエル、ゾナゴン、ゼルドは異様な盛り上がりを見せていた。


「リュート! 釣り大会に出るわよー!」

「は?」

「賞金がすごいんだぞな!」

「竜騎士は有利だぜ!」

「釣り大会……? 何言ってるんだ? この辺に川はないから、海まで行くのか?」

「違うわよ! 今年はじめて行われるこの釣り大会はね、砂漠に棲むモンスターを釣り上げるのよ! ダナギル砂漠っていう魔物が一番発生する危険な砂漠におもむいて、魔物討伐をするお祭りらしいわよ」

「ええーっ! なんじゃそりゃ!」

「いい? 釣り大会参加は決定事項なんだから! だって賞金が百万ゴールドよ!」

「いや、おかしいだろ! 魔物が大量発生する危険な砂漠に赴いて、賞金がたったの百万ゴールドは!」

「じゃあリュートは出ないの?」

「み、みんなが行くっていうなら、オレも行かないとダメだろ? 特にラミエルは足を引っ張るんだし……。まあ、実際にお金は欲しいし……仕方ない、出るか」

「何でお金が欲しいのよ? って、あ! リュート新しい槍買ってる! それ高いんでしょー! あたしも魔導書を買いたいのにーっ!」


「それじゃあ、決まりだな。釣り大会に参加だ!」


 ゼルドがガハハと笑った。


 砂漠の国へ来てから二週間。

 リュウトたちは思い思いに砂漠の国の生活を楽しんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る