第89話 砂漠の霊廟とランプの魔人3の件

 砂漠の地下霊廟を探索しだしてから数時間。一行は最奥までたどり着いていた。


「マミーどもも現れなくなったな」


 ゼルドが大剣をしまった。


「魔人の封じられているランプ。こんだけさがしてもないなんてね~。やっぱり噂は嘘だったのね」


 と言いながらラミエルが壁にもたれると、ラミエルがもたれた箇所だけ遺跡の壁が崩れた。


「わっ! え、ちょっと! きゃー!」

「ラミエル!」


 ラミエルが崩した壁の向こう側に隠し小部屋が現れた。


「ラミエル! 大丈夫?」


 アリアがラミエルのもとに駆け付けた。


「あはは、あたしは平気」


 ラミエルはアリアに心配されて恥ずかしそうに頭をかいた。

 そのとき、リュウトは隠し小部屋の中の台座の上に例の物があることに気が付いた。


「み、みんな! ランプが! 魔人のランプがある! ほら、あの台の上!」

「ええっ」


 見ると、確かに台座の上にランプが置かれている。

 一メートルはありそうな、巨大なランプだった。


「ひゃ~! 魔人のランプってこんなに大きいんだ! ゾナゴンくらいなら余裕で入れそうだな!」

「リュート、嫌なことを言うなぞな~! でもこのランプ、ホントにホントに魔人のランプぞなか?」


 ランプは怪しげに青白く輝いていた。


「おいおい! 伝説の通りじゃないか!」


 ゼルドも興奮しているようだ。


「ねえちょっと! あたしがこの小部屋を見つけたんだから! もちろんあたしにこのランプの所有権があるわよねっ! ねっ!」


 ラミエルは魔人のランプの前に立って、みんなを振り返りながら言った。


「ラ、ラミエル……」

「ぞな……」

「なによ、その顔は」


 ラミエルは気が付いていなかった。

 ランプの口から、青い煙が出ていたのだ。


「ラミエル……うしろ……」

「な、なによ?」


 ラミエルがゆっくりと後ろを振り返ると、青い煙が襲い掛かってきた。


「キャーッ!」


 悲鳴はラミエルのものではなく、アリアのものだった。


「えっ! アリアッ?」


 青い煙はアリアに襲い掛かってきたのである。

 青い煙の中に包まれたアリアは、ランプの中に一瞬で吸い込まれてしまった。助ける暇もなかった。


「ア……アリアーッ!」

「アリアーッ!」


 仲間たちは絶叫した。


「ん……んん……」


 アリアが目を覚ますと、そこはランプの中ではなかった。

 見知らぬ家の、見知らぬベッドの上だった。


「えっ……!」


 アリアは驚いて起き上がった。

 椅子、寝具、クッション、カーペットにカーテン。全体的にピンク色の部屋の中だった。

 アリアが部屋を見渡していると、扉をノックする音が聞こえた。


「は、はいっ」


 アリアは癖で返事をしてしまった。

 ランプの中から出てきた煙に捕らわれてしまったのだから、ランプの魔人が出てくる可能性もある。気を引き締めなければならない。

 だが、扉を開けて入ってきたのは見知った人物だった。


「えっ! リュ……リュウトさんっ?」


 部屋に入ってきたのはリュウトだった。

 リュウトはまるで軍服のような黒い服に身を包んでいた。


「えー? アリア、どうしたんだよ。昨日までお兄ちゃんって呼んでただろー?」

「お……お兄ちゃん……?」

「そうだよ」

「えっ……。一度もそんな風に呼んだことない、よね?」

「へ? 何言ってんだ? まあいいや。もうそろそろ家を出ないとバスに間に合わなくなるから、はやく行こうぜ」


 アリアには『バス』がわからなかった。


「バスって……?」

「えーっ! アリア、やっぱりおかしいよ! 熱とかないよな?」


 リュウトはアリアに近づいた。熱があるかないか確認するため、おでこを触った。

 アリアはドキドキした。


「う~ん。熱はないみたいだな」

「えっと……」

「ほら、じゃ、ランドセル背負って。行くぞ」

「ランドセル……?」

「えー。ホントに大丈夫かあ? ほら、このピンク色のカバンだよ。アリア、一年生になる前にピンク色がいいって言って選んでたじゃないか。覚えてないのか?」

「ご、ごめんね。このカバンを背負えばいいのね」


 アリアは何が起こっているのかよくわからないが、流れには逆らわないでいようと思った。


「うん。そうだよ。じゃ、行こう」


 リュウトはアリアに手を差し伸べた。

 なんだかいつものリュウトより距離が近い気がする。――こころの距離が。


 玄関で靴を履き替えて、リュウトたちはバス停に向かった。

 リュウトは自転車を押していた。


「へっへへー。今日から自転車通学はじめるんだ。運動不足だからちょっとは頑張らないと!」

「自転車……。リュウトさんとはじめて会ったときに着ていた服の紋様だよね……竜が乗っていた乗り物……」

「アリア……。確かに自転車に乗った恐竜のワッペンがついてるシャツはお気に入りだからよく着てるけど……。やっぱり今日、本当におかしいな。何かあったら連絡しろよ。すぐに行くから」


 アリアは考えた。

 リュウトが運動不足というのは、どういうことだろう。

 ひょっとして、ここはリュウトが飛竜の森にいたより前の世界なのだろうか。


 アリアとリュウトはバス停に着いた。


「おっ! ちょうど来る頃だな」


 バス停にバスが止まった。


「えっ……」


 アリアは目を丸くした。

 生まれてはじめて『バス』なるものを見た。


「な、なにこれ……」


 バスの扉が開いた。

 中に、人がいる。


「このバスに乗って、小学校に行くんだよ。大丈夫か、アリア?」

「乗る? 小学校?」


 バスとは馬がいらない馬車のようなものだろうか。バスと馬車は語感が似ているからそうなのかな、とアリアはぼんやりと考えながら、リュウトに言われた通りにバスに乗った。すると、また見覚えのある顔が出てきた。

 バスの運転手は、アリアの父、モイウェールそっくりの人物だった。


「お父……様……」


 アリアはショックを受けた。

 父モイウェールは兄ソラリスの手によって殺されたはずだ。


「ははは。君のお父さんにわたしが似ているかい?」


 モイウェールそっくりのバスの運転手は笑った。


「あ……」


 ――笑い方まで似てる。やさしかった頃のお父様に。


 バスの外で、リュウトがアリアに言った。


「じゃあ、アリア! オレは自転車で高校に行くから。何かあったら、オレを呼べよ!」


 リュウトは自転車にまたがって行ってしまった。


 アリアは運転手から逃げるようにしてバスの後ろの方の席に着いた。

 バスはほぼ満席で、その席しか空いていなかった。

 二人掛けの席で、窓側には女の子が座っている。

 またもやアリアは驚いた。

 席に座っていたのは、ラミエルだったからだ。


「ラミエル! どうして……」

「何? あんたどうしてあたしの名前を知ってるの? あ、そっか。あたしってば有名人だからねー。帰国子女の天才美少女ラミエル様! 名前を知らない人の方が少ないか!」


 ラミエルはアリアのランドセルを見た。

 名札に『佐々木』と書かれていたので、ラミエルは笑った。


「佐々木ぃ? リュートと一緒の名字じゃない! あ、わかった! あなたがリュートの妹のアリアでしょ! へーえ! お兄ちゃんに似てなくて可愛いじゃない! ほっぺた触っていい?」

「ラミエル……」


 扉が閉まり、バスは走り出した。


 ――なにこの世界……。リュウトさんが飛竜の森に来る前の世界だと思っていたけれど、お父様やラミエルがいるなんておかしい。絶対に違う。わたしは……夢を見ているの……?


 アリアはランドセルをぎゅっと抱えた。

 しばらく大人しく乗っていると、バスはまた止まった。


「さ、アリア。小学校に着いたわよ。アリアはここで降りるの。じゃあね! また会いましょ!」

「あ……」


 アリアはバスから降りた。

 建物の前だった。


「ここが、小学校……。わたしは……何を勉強してたんだろう……って、違う違う! この世界に飲み込まれるところだったけど、そうじゃない! ここにははじめて来たのよ、わたし」


 学校の建物の前にも、見知った人物がいた。

 オレンジ色の髪をなびかせた、大人の女性だ。


「おはようございます」


 オレンジ色の髪をした女性はアリアに挨拶をした。


「マリ……マリンさんっ!」


 アリアは気が動転した。

 今度、マリンに会えたら、あの日のことを謝りたいとずっと思っていた。


「ふふっ。どうしたの、アリアさん」

「あの、わたし、わたし……」


 アリアは震えて口がうまく回らなかった。


「ごめんなさい! わたし、わたし……。あなたにひどいことを言っちゃって……」


 マリンは微笑んだ。


「あら。ごめんなさい。わたし、アリアさんからひどいことを言われた記憶がないわ。だから、大丈夫。気にしなくていいのよ。大丈夫だからね」

「マリンさん……」


 マリンの笑顔には、嘘がなさそうだ。


「さあ。そろそろ授業がはじまるから、教室に入って」

「は、はい……あの、どこの教室に行けばいいですか?」

「あなたは五年一組の児童ですよ」

「あ、ありがとうございます」


 アリアは少し彷徨って、五年一組の教室にたどり着いた。


 教室に入ると、元気な声がアリアを迎えた。


「アリアが来たぞなーっ!」

「えっ! ゾナゴンまでいるの!」


 ゾナゴンはゾナゴンの姿のままで教室の一番後ろの席に座っていた。


「我はアリアが来るのをずっと待っていたぞな!」

「えっ! あの、ゾナゴンもこの学校に通っているの?」

「? そうぞな。アリアの隣の席でいつも授業を受けているじゃないかもし。アリア、どうしちゃったぞな?」

「ええ……そ、そうなんだ」

「まあそんなことはどうでもいいぞな。はいっ! アリアに渡そうと思ってた石をあげるぞな。学校に来る途中で拾ったんだぞな~!」

「あ、ありがとう……」


 アリアはゾナゴンから石を受け取った。


「あっ、キレイ!」


 ゾナゴンからもらった石は、いつもゾナゴンが大事そうに持ち歩いているごく普通の石ではなく、透明で輝いた石だった。


「きっといつか役立つぞな」


 アリアは石をポケットの中にしまった。

 次にアリアはランドセルを開けた。

 ランドセルは妙に軽かったので、中身が気になっていた。


「これ……!」


 ランドセルの中には、オカリナが一つ入っていた。

 聖鳩琴にしては小さすぎるが、瓜二つだ。


「わー、アリア、なんでオカリナを持ってきたぞな? というか、オカリナしか持ってきていないぞなっ? アリア、それはマジでヤバいぞな~! 教科書は我が見せてあげるから、落ち込むんじゃないぞな!」

「え……なんで……」

「それはこっちが聞きたいぞな!」


 アリアにはもう何がなんだかわからなかった。

 聖鳩琴をミニチュアにしたようなサイズ感のオカリナ。

 それが、なぜランドセルの中に。


「意味を考えるだけ無駄な世界なのかな――」


 授業がはじまった。

 マリンが教壇に立った。


「ほわわ~! 海野先生、今日も一段と素敵なんだぞな~」


 ゾナゴンはマリンを見ながら目にハートマークを浮かべた。


「マリンさん、海野先生って呼ばれてるんだ」

「えっ! ……今日のアリアは本当におかしいぞな」


 いぶかしがるゾナゴンを気にせずアリアは教室の前方に、仲がよさそうに寄り添っているセキセイインコが二羽いたので、ぼーっと眺めていた。

 授業にはとても集中できそうにない。


「アリア、インコを眺めているぞな?」


 ゾナゴンは先生に見つからないように隠れて小石を拭きながらアリアに尋ねた。


「うん。可愛いね。名前はあるの?」

「えーっ? 生き物係のアリアがインコの名前を忘れちゃダメだぞな! 大きい方がシリウスで、小さい方が風竜ぞな! どうして忘れるぞなもし?」

「……」


 学校が終わった。


「気をつけて帰るんですよ」


 海野先生と呼ばれているマリンが校門で手を振った。


「それじゃあアリア、また明日ぞなーっ!」


 ゾナゴンもアリアに手を振り、帰っていった。

 夕日が沈みかけている。

 今日の夕日はやけに赤い。

 怖さを感じるくらいの赤さだ。


 ――はやく、リュウトさんの元に帰らないと……。


 アリアがバス停で待っていると、朝と同じバスが止まった。


「……」


 アリアはバスに乗り込んで、運転手の顔を見た。


 ――やっぱり、お父様にそっくり。


 アリアは今度はバスの一番後ろの窓側の席に座った。

 バスには、誰も乗っていなかった。


「……やっと、一人になれた……」


 アリアはまたランドセルをしっかり抱えながら座った。


「あはは、疲れてる……」


 バスは動き出した。

 外の夕日が眩しい。

 疲れているせいか、眠くなってきた。

 アリアがうとうとしていると、バスが止まった。

 バスの扉が開くと、男が一人乗ってきた。

 黒髪で長身の男だった。


「あっ――」


 アリアは息を飲んだ。

 そして、息を殺した。

 バスに乗ってきた男は――ソラリスだった。


「……!」


 アリアは恐怖で震えた。

 ソラリスは運転手の真横に立ち、懐からある物を取り出した。

 アリアの位置からはその何かが見えない。


「――死ね」


 ソラリスが冷たく言い放つと、その何かの引き金を引いて、発砲した。

 ズドン、という音が響くと、運転手はぐったりと倒れこんだ。


「ふふふ……ははははは!」


 ソラリスは笑った。

 ソラリスがモイウェールを殺す。

 例のあの日と同じことが起こった。

 三日以上、うなされる羽目になった元凶の――例のあの日と同じことが。

 アリアは吐きそうになって、必死で口を押さえた。


 ――お願い、お願い……。悪夢なら、覚めて……!


「……そこにいるのはわかってる」


 ソラリスは落ち着いた声色で言った。

 そしてアリアの方へゆっくりと歩き出した。

 一歩一歩、バスの後方の席へと近づいてくる。

 アリアは窓の外を見た。

 こわさを感じるほどの赤い夕日はもうどこにもなく、窓の外は真っ暗闇だった。

 どうして急に暗闇に、とアリアが怯えていると、窓ガラスに真っ白い手形が一つ、ついた。

 白い絵の具を手のひらにつけて、窓ガラスに押し付けた様な手形だった。

 手形が一つついたかと思うと、また一つ、また一つと手形は増えていった。

 手形はどんどんと増えていき、窓ガラスは白い手でビッシリと覆われた。

 アリアは恐怖でひきつって、悲鳴すらでない。

 白い手は外側から言葉を叫んでいるようだった。

 それは、耳をふさいでも聞こえてくるような呪いの言葉だった。


『アレーティア王女』

『我々は闇の魔導師』

『お前は神への供物』

『それなのに何故だ』

『何故我らを殺した』

『この恨み忘れぬぞ』

『仲間共々道連れだ』

『必ずや殺してやる』

『地獄に連れて行き』

『臓物をえぐり出し』

『食ろうてやろうぞ』

『この恨み晴らさで』

『おくべきか、主よ』

『我らを救いし主よ』

『かの女を呪い殺す』

『力を与え給え主よ』

『呪われし女神の器』

『アレーティア王女』

『この美しい世界を』

『破滅にみちびく女』

『この幸せな世界に』

『災厄をもたらす女』

『アレーティア王女』

『アレーティア王女』

『アレーティア王女』


 アリアの恐怖心はピークに達した。

 ゆっくりと後部座席に近づいてくるソラリス。

 窓には呪いの言葉を放つ闇の魔導師たちの白い手がビッシリと張り付いている。


「アレーティア……」


 アリアの座っていた座席に、ついにソラリスがやってきた。

 アリアはランドセルを強く握りしめた。

 ソラリスは穏やかに笑っている。


「愛している、アレーティア」


 ――愛、して?


「に……」


 ソラリスは上唇を舌なめずりしながら運転手に向けて撃った『何か』を、アリアに向けた。


「それは――何ですか……兄様……」

「ピストルだ。見ればわかるだろう? それとも、知らないのか?」


 アリアにはわからない。だけど、とても嫌なものだということだけはわかる。


「これはな、こうやって、欲しいものに目掛けて撃つんだ。そうすると、オレは欲しいものが手に入る。オレが何が欲しいか、聡いアレーティアならわかるだろう?」

「やめ……やめて……」


 アリアは首を横に振った。


「アレーティア……愛している……。だからくれないか? オレは欲しくて欲しくてたまらないんだ。そう。お前の命が、な――」


 窓ガラスについた白い手が一斉に窓を叩きだした。

 バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン、バンと白い手が窓を叩く。

 手形だと思っていたものは手形ではなく、実物の手だったのだ。

 ソラリスがアリアを撃ち殺す瞬間を祝福するかの如く、白い手は窓を叩き続けた。


「やだ……やめて……兄様……助けて……!」


 ――助けて、リュウトさん!


 アリアはこころの底から念じた。


「少し痛いが、我慢しろ。じきに痛みはなくなる」


 アリアは思い出した。


 ――リュウトさんを呼ばなくちゃ。リュウトさんは『何かあったら連絡しろよ。すぐに行くから』って言っていた。リュウトさんなら、絶対に助けに来てくれる!


 アリアは無我夢中でランドセルを開いた。

 中には小さなオカリナがある。

 アリアはオカリナを手に持ち、一生懸命吹いた。

 闇の魔導師に捕らえられていたとき、聖鳩琴を吹いたらリュウトが助けに来たことをアリアは思い出していた。

 オカリナは音が出ない。

 そこまで聖鳩琴と同じにしなくてもいいのに。

 アリアは両目から涙が出た。


 ――死ぬ前に、もう一度、もう一度会いたい……。


「もういいだろう、アレーティア」


 アリアは祈った。


 ――神様、もう一度会わせてください。リュウトさんに、もう一度会わせてください……。


 アリアが涙を流して祈ると、突然地面が揺れ出した。


「何だ……? 何が起きている……!」


 地面の揺れが収まると、一瞬、白い光がバス全体を包んだ。


「ああっ!」


 アリアはあまりにも眩しい光に目を閉じた。

 光が止むと、アリアはおそるおそる目を開いた。

 そして驚いた。

 闇の魔導師たちの手はすべて消え失せ、ソラリスは石になっていた。

 まるで目を見た者をすべて石に帰してしまうという魔物、メドゥーサの瞳を見てしまったかのようにソラリスはかたまっていた。

 窓の外は、暗闇から真っ白な空間に変わっていた。


「ここは――」


 アリアは石になったソラリスをかいくぐって、バスを降りた。

 白い空間だと思っていたものは、大きな道だった。

 大きな白く光る道が、天まで続いていた。


「一体何が……」


 そして、天を見つめるアリアの脳に声が響いてきた。


『さあ、ボクのところへおいで――』


 知らない声だった。

 少年のような、それでいて女性のような、不思議な声だった。

 

 アリアは意を決して、天まで続く白い道を歩いていった。

 この道を行かなくてはいけない、とアリアは感じていた。

 長く長く続く道を、アリアは声に導かれるままに進んでいった。

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