第66話 操られし泥人形2の件

 魔導士の国マギワンドへ最後の一歩というところで、リュウトたちは石の巨人の魔物、ゴーレムと遭遇した。


「ゴーレムはあたしの雷の魔法が効かないのよーっ!」


 ゴーレムから走って逃げながらラミエルは言った。


「でもまずラミエルの攻撃は当たらないぞなっ!」


 リュウトの肩に乗るゾナゴンがラミエルに言った。


「な、ななな、なによーっ!」

「こんなときにケンカしてる場合じゃないだろっ!」


 四、五メートルくらいある巨大な魔物、ゴーレムはリュウトたちを目掛けて両手を振り下ろして攻撃してきた。


「危ないっ!」


 リュウトはラミエルをかばった。


「リュ、リュート!」

「大丈夫か、ラミエル!」

「う、うん……」


 ――剣の攻撃もあの魔物には効きそうにないし、どうする?


 リュウトは風竜の風の攻撃を思い出した。


「風竜っ! 行けるか!」


 リュウトは飛んできた風竜に飛び乗った。

 シリウスはゾナゴンとラミエルを乗せて空へと逃げた。


「風竜、行け! 風の攻撃だ!」


 リュウトが命令すると、風竜は風の攻撃を数個繰り出してゴーレムに当てた。

 風の魔法の攻撃がヒットしたゴーレムはひるんでしりもちをついた。


「ゴガゴガ」


 ゴーレムはダメージを受けてうなっている。


「行くぞなーっ!」


 今度はゾナゴンがシリウスの上から闇の魔法を放った。


「ゴガガガガ!」


 ゴーレムに闇の魔法が当たり、地面に仰向けになって倒れた。

 そして腹部に、赤色に輝く玉のようなものが露出した。


「あれよ! ゴーレムの弱点はあの赤い玉よ!」


 ラミエルが叫んだ。


「あたしが雷の魔法を決めるわ!」

「ラミエル、無理をするな!」


 リュウトがあわてて叫んだ。

 魔法攻撃は使った本人の精神力を消耗するし、隙も大きい技だ。


「しーっ! 黙って! 集中するんだから! あたしだって、アリアを助けたいのよ! ポンコツ魔導士のままではいられないんだから!」


 ラミエルは呪文を唱えた。そして。


「ヤーーーーーーッ!」

「ゴガガガガ!」


 雷の魔法は見事ゴーレムの弱点の赤い玉にヒットした。


「あ、当たった~!」

「いや! もう一撃だ!」


 リュウトは風竜から飛び降りて剣でゴーレムの赤い玉を貫いた。


「ゴガーッ!」


 とどめをさされたゴーレムは塵となって消えていった。


「ふう! やったぜ!」

「やったわーっ! ゴーレムに勝ったーっ!」

「イエーイぞなーっ!」

「リュートぉお!」


 ラミエルは勝利に酔いリュウトに抱き着いた。


「リュートおおおお!」

「ラミエル! やったじゃないか!」

「キャーキャーキャー! やったわー!」


 嬉しさで叫んでいる途中で、ラミエルは正気に戻った。


「えっ! ちょっとリュート! 抱き着かないでよ!」

「抱き着いてきたのはそっちだろ!」


 調子が良くなるとすぐこれだ、とリュウトが思っていると、ラミエルはリュウトの奥に人がいるのを見つけた。


「あああっ!」


 ラミエルは森の陰に怪しい人物を指さした。


「や、闇の魔導師がいる!」

「えっ!」


 リュウトが振り返ると、黒いローブに身を包んだ闇の魔導師がいた。

 闇の魔導士は茫然と立ち尽くしている。


「あんたがゴーレムを操ってたのね!」


 ラミエルの言葉を無視し、魔導士は下を向きながらひたすら呪いの言葉を吐いていた。


「……みんな燃えろ、みんな燃えろ……」


 ラミエルは闇の魔導師の姿を見て、魔導学院が襲撃に遭った日の光景を思い出した。不条理に燃えていく学び舎。身を挺して救ってくれた親友との悲しい別離。


「闇の魔導師は全員許さない! 学院の仲間たちの仇よ!」


 ラミエルは本気の雷魔法の攻撃を放った。


「ハアアッ! 食らいなさい! 裁きの電撃をッ!」

「うぐぅっ……!」


 雷の攻撃はまたもやヒットして、直撃を受けた闇の魔導師は倒れた。


「勝った……。あたし、立て続けに二度も攻撃が当たったわ! ねえ、リュート、あたしを見てた? ねえ!」

「うん。見てたよ……」


 ゴーレムに雷の魔法を当てたのはまぐれだと思っていたが、どうやらラミエルの魔法の熟練度は本当に上がっていっているようだ。


「そう! ならいいわ! さーて、ここから先はついに到着マギワンドよ! アリア、待っててね。絶対に助けに行くんだから……」


 倒れる闇の魔導師を見て、雷少女ラミエルの本気はおそろしいんだな、とリュウトは思い、つばを飲みこんだ。


「彼女を怒らせるとこうなるんだな、ゾナゴン……」

「ひええ……。とんでもない女ぞな……」


 いよいよ魔導師の国、マギワンドだ。

 アリアを助けたいのはラミエルだけじゃない。


「行くぞ、マギワンドへ!」

「ぞな!」


 ドラゴンに飛び乗り、一行はマギワンドへ進んでいった。


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