第63話 旅立ちの件
アリア救出のため、魔導士の国マギワンドへ向かうことを決意したリュウトたちは、王国竜騎士団のメンバーに旅立ちの報告をしに南西の砦に行っていた。
「というわけで、王族の方々の許可を得たので、アレーティア王女の救出に行くことになりました」
ストラーダはリュウトの報告を快諾した。
「そっか。じゃ、気をつけろよ。お姫さんもリュートが助けに来てくれるのを待ってるだろうから、はやいとこ行って、ぱぱぱっと助けてやれよ」
ストラーダのいつも通りの笑顔を見るとリュウトは安心する。
「アレーティア王女……。生きて……ますよね」
「そりゃー、おめーさんが信じてやらねえとな!」
「はい」
リュウトが報告を済まし、ラミエルと風竜の待つ場所まで近付くと、コンディスとフレンがやってきた。
「リュート! 外国に行くんだってな! 気をつけろよ!」
「ありがとう。コンディス」
「で、その女の子は何なんだよ」
コンディスはラミエルを指さした。
「ああ……。彼女はラミエル。雷の魔法使いなんだって。マギワンドから来たんだ」
コンディスはラミエルに近付いて話しかけた。
「やあ君! 可愛いね」
ラミエルはコンディスをにらみつけて、そっぽを向いた。
「あたしむさくるしい男は嫌い!」
「な、なんだと~?」
「ごっ! ごめん! ちょっと変わった女の子なんだ!」
ラミエルにけなされて怒るコンディスをリュウトがなだめた。
「リュート! 聞こえてるのよ!」
ラミエルはどうしてこうも感情的なんだろうとリュウトはため息をついた。
ラミエルは気にせずキョロキョロと砦の屋上を見渡した。
「ちょっと! それよりリュート、あっちのイケメンを紹介してよ」
ラミエルは飛竜の世話をするシェーンたちを指さした。
「やだ」
リュウトは即答した。
「なんでよ!」
「あのさあ、オレたちはアリアを助けなくちゃいけないだろう?」
リュウトの言葉にラミエルは深くうなずいた。
「そうよ! たしかにこんなところで油を売ってる場合じゃなかったわ! じゃあ出発よ! アリアがあたしたちを待っているわ!」
ラミエルは風竜にまたがり、リュウトは肩にゾナゴンを乗せてシリウスにまたがった。
そして、二匹の竜は宙に浮かび上がった。
「それじゃあ、行ってくるよー!」
リュウトの挨拶に、竜騎士たちは手を振って見送った。
「お土産買って来いよー!」
「今度はもっと性格のいい女の子を連れてこーい!」
「わはははははは」
「何よ、べーっだ!」
風竜の上からラミエルは竜騎士たちにベロを出した。
「そんなことしてると舌を噛むよ」
「そしたら慰謝料をあの間抜けな竜騎士に請求するわ!」
「はあ……。嫌な女だよなーラミエルって」
「何よ! リュートだって嫌な奴じゃないの!」
「うう……。ストラーダの言う通り、はやいところ旅を終わらせたい……」
リュウトたちは空を飛んで行った。
砦でリュウトを見送ったコンディスがつぶやいた。
「リュートって……波乱万丈だよなあ」
「そうだな」
コンディスのつぶやきにフレンが相槌を打った。
「帰ってきたら面白エピソードを根掘り葉掘り聞いてやろうぜ。あいつはその手の話題に尽きない運命をしてるみたいだからな」
「ははは……。ちょっと気の毒な気がするけどな……」
こうして、リュウトたちはリト・レギア王国を出発し、魔導士の国マギワンドへ向かう旅がはじまったのだった。
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