第40話 言い伝えってそんなもんの件
遠足から帰ってきてから、リュウトは伝説の聖剣、トツカの剣を眺めていた。
トツカの剣なのに、この剣を守っていた蛇の頭は七つなのかといった細かいことは考えないようにしていた。
「全然普通の剣なんだけど、本当に聖剣なのか~?」
振っても叩いても、聖剣らしさを感じさせることは起きない。
「トツカの剣は、それはそれは昔はすごい聖剣だったときくぞなね。だけど、今はもう当時の力はないぞなね~」
トツカの剣のにおいを嗅ぎながらゾナゴンは言った。
「オレ、ホントに選ばれた者なのかなって少し期待したのに。ただの剣ってことか」
「うむ。古くなりすぎてショートソードと同じくらいの価値の剣になってしまったぞなね」
「ショートソードと同じか。ショートソードの二刀流、佐々木リュート! って、一本でも持て余しているのに。ダサダサだよ」
ゾナゴンはちょこんと飛び跳ねてリュウトの頭の上に乗った。
「言い伝えなんて、あてにならんぞな。昔にあった出来事は、口伝えされていくうちに事実と変わってしまったり、意図的に間違ったことを伝えられたりするぞな。リュートは自分の目で、公正な目で、見たものを大事にしていくといいぞな。うわさなんてあてにしちゃダメぞな。自分の目で真実を突き止めていくのが大事ぞな~」
「ゾナゴン。なんかちょっといいこと言ったな」
「我はいつもいいこと言ってるぞな」
――自分の目で、真実を突き止めていく、か。
――忘れないようにしよう。
リュウトはトツカの剣を余っていた鞘におさめて、荷物置き場に無造作に置いた。学校に通っている間は、出番がないだろう。
昔は伝説だったこの剣は、今はもう何の力もないただの剣だ――。
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