第9話 人助けができてよかった件
リト・レギア王国の王城に、アリアとリュウト、双子の竜騎士ノエルとリアム、そしてアスセナ族の生き残り、マリンは帰ってきた。
まずは国王モイウェールに用事があるアリアが、父を探して国王の部屋を訪れた。国王の部屋には、モイウェール王と王太子ソラリスが一緒にいた。
「おっ、我らが殿下もいるじゃん。探す手間が省けたぜ~」
リュウトの背後からひょっこり顔を出したリアムが言った。
「なぜ……わかってくださらぬのか、父王」
「くどい。いつまでそんなことを言っておるのだ、ソラリス。そのような戯言を繰り返すなど、お前は次期国王としてふさわしい器ではないのかもしれんな……」
「父王。その言葉は本気で仰っておられるのか……」
なにやら、国王とソラリスは言い争いをしているようだった。
「お父様?」
アリアが一歩前に出る。
アリアが帰ってきたことに気が付いた国王は、険しかった表情を一変させた。
「おお! アレーティアか! 愛しき娘よ」
「……お取込み中でしたか?」
「いいや。もう話は済んだよ」
「お父様にお願いしたいことがあるのです」
「なんだ? 可愛い娘よ。申してみよ」
アリアはうなずいた。
マリンが、アリアの横に立った。
「そちらの女性は?」
「彼女は、アスセナ族のマリンです。山賊に襲われているところをわたしが……助けたかったんですが、ノエルとリアムが助けました」
「はじめまして。マリンと申します」
「お、おお……」
国王は狼狽した様子だった。
「似ている……」
「どうされました? お父様」
「いや、なんでもない。なんでも……」
「彼女は行き場を失った可哀想な人です。しばらくの間、王城で住まわせていただけませんか?」
アリアは国王に懇願した。
「うーむ……」
「お父様、いいでしょ!」
アリアはもうひと押しした。
「よかろう。しばらくの間とは言わず、いつまでもいてくれて構わん。アスセナ族は、複雑な事情があるからな……」
「ありがとうございます、陛下」
マリンはぺこりと頭を下げた。
よかった、これでマリンは安全に暮らしていくことができる。アリアとリュウトは目を合わせて合図した。
話がついたところで、ノエルがソラリスに話しかけた。
「殿下、お話があります」
「わかった。部屋で聞こう」
ソラリスと双子の竜騎士ノエルとリアムは国王の部屋をあとにした。
三人が部屋から出ていく姿を見送ったアリアはリュウトに言った。
「兄様。同じアスセナ族の方を連れて来たのに、見向きもされなかった」
「それどころじゃなさそうな雰囲気だったな……」
国王の部屋を出て、改めてマリンはアリアとリュウトにお礼を言った。
「ありがとうございます。まだ、お二人のお名前をお聞きしていませんでしたね」
「わたしはリト・レギア王国の王女、アレーティア。でも、できればアリアって呼んでください」
「オレはリュウトっていいます。ああ、でも呼びにくかったらリュートでもいいです」
二人の自己紹介を聞いて、マリンは楽しそうに微笑んだ。
オレンジ色の髪が揺れて、キレイだった。
「よろしくお願いします。アリアさん。リュウトさん。お二人はとても息がぴったりなんですね」
「そ、そう見えますか?」
「はい、そう見えます」
アリアとリュウトはお互いに目を合わせたあと、照れ笑いをした。
女中に呼ばれたマリンと別れたあと、アリアがリュウトに言った。
「人助けができてよかったね。ま、まあ……ノエルたちの助けがあったから結果的に人助けができたって感じだけど」
「ああ」
リュウトは、アリアの話し方が変わったことに気が付いたが、それを指摘するのはやめておいた。
リュウトはアリアとのこころの距離が近付いたことを、嬉しく思っていた。
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