第4話 ドラゴンより強い美少女はお姫様だった件

 ――夢を見た。とてもリアルな夢だ。飛竜の飛び交う異世界へ転生してしまったと思ったら、美少女に助けられ、一緒に旅をすることになった夢だ。美少女は、洞窟で出会ったドラゴンと戦い、負けそうにはなるものの、力を認められて、無事に契約の指輪をもらった。そして、ドラゴンに乗って王城まで帰った。ドラゴンの背中の上で見た夕焼けは、とてもとても美しかった――。


「うっ! うわああああああ!」


 佐々木リュウトは、自らの絶叫で夢から覚めた。


「ド、ドラゴンが! ドラゴンがあっ……!」

「お気付きになられましたか?」


 声をかけてきたのは、見知らぬメイドだった。


「え? ここは……?」


 リュウトは、辺りを見渡した。


「そうだ。夢じゃない。風竜の背中に乗って、アリアと一緒に王城に来たんだ。そしてここは」


 王城の客室の一室。

 の、ふかふかのベッドの上。


「新しいお召し物はこちらにございます。ご用がありましたら、遠慮なく仰ってくださいね」


 メイドは壮年の女性だった。物腰が丁寧で、穏やかそうな印象を受ける。


「はい」


 リュウトは、メイドが部屋から出ていくと、用意されていた服に着替えた。

 中世世界の人々が着ているような麻布の長着と、サイズぴったりの履物だった。

 部屋にある姿見の前にリュウトは立ってみた。


「はっはは。似合わねーの」


 ふと、アリアの顔が思い浮かんだ。


 そして昨日、王城までたどり着いた後のことを思い返した。

 正門を飛び越え、中庭に降り立った風竜の前に、城を守る騎士たちが一斉に集まってきて、王城の玄関扉まで一本の道を作った。アリアが竜から降りると、騎士たちは敬礼をした。騎士たちの統一された動きに、リュウトは驚いて暫しかたまってしまった。


 それから、夕食をご馳走してもらい、大浴場に一人で入った。王城の中は広く、まさに豪華絢爛といった派手な内装だった。家族旅行で海外のホテルへ泊まったことがあるが、もはや比ではなかった。

 ただ一つ、ケータイの充電ができないのが残念だった。ケータイはバッテリーがなくなり、電源を押してももう反応しない。


「リュウトさん。入ってもよろしいですか?」


 扉の向こう側から、アリアの声がした。

 ぼーっとしていたので、突然聞こえたアリアの声にドキリとした。


「あっ! どうぞ!」

「では失礼します」


 アリアが、扉を開けて入ってきた。


 アリアはドレス姿だった。

 ドラゴンと戦うための鎧姿だった昨日とは打って変わって、清楚さを感じさせる白いドレスだ。


「ああ……」


 リュウトは茫然と見惚れてしまった。


「? どうかされましたか?」

「えっ! いや、なんでもないです! なんでも……」


 ドレス姿、お似合いですねの一言でも言えたらよかったのだが、リュウトは不器用だった。女の子を素直に褒める技量なんてものはない。


「アリアは本当に王女様なんだなあ……」


 なんだか、遠い世界の人に思える。

 いや、実際に遠い世界の人なのか、とリュウトは変に納得した。


「お父様がリュウトさんとぜひ一緒に朝食を取りたいと言っているのですが、どうされますか?」

「お、お父様? アリアのお父様ってことは、こ、国王陛下?」

「はい……」

「ひええ……」


 国で一番偉い人と一緒にご飯を食べるなんて、と考えると、緊張で死にそうだった。


 だが、その心配は杞憂に終わった。

 アリアの父で、国王のモイウェール王は明朗快活な人柄をしていた。

 王族専用の食堂へ赴くと、リュウトを見るや否や、手厚く歓迎してくれた。太陽のように明るく、理想の父親像そのものだった。

 食卓には肉やワインが何種類も山のように並べられ、三人で食べきれる量ではないよな、と思った。


「時に、リュウトくん。うちの娘とはいつ結婚する気でいるんだね?」

「ーーーッ!」


 リュウトは飲んでいた何の果実かはわからないが口に合うジュースを吹き出しそうになった。


「げほっ! げほっ!」

「お、お、お父様!」


 アリアが顔を赤くして反論する。


「リュウトさん、気になさらないでくださいね! お父様はいつもいいかげんなのです」

「そ、そうなんだ」


 仮にも第一王女を、今はどこぞの馬の骨ともわからない状態のリュウトと一緒になることを冗談でも許可できるなんて、懐が広すぎる。国王にそれだけ気に入ってもらえたのはリュウトにとってはありがたいことなのだが。


「リュウトくん。君は自由に城で暮らしていいぞ!」


 顎に蓄えられた長く白いひげをさすりながらモイウェール王はリュウトに言った。


 アリアは王が高齢になったときの子だろうか。二人が並ぶと、親子というより祖父と孫だった。


「ありがとうございます」


 と、リュウトがお礼を言っているそのとき、厳格そうな見た目の、メイド長らしき人物が食堂に入ってきた。


「陛下、お薬の時間です」

「ああ、あれか。……ワシはルインズ産の麦酒を飲みたいのじゃが」

「いけません。毎食後必ず陛下に薬を飲ませるよう、ルシーン卿に言われていますから。陛下が薬を飲まなければ、わたくしが怒られてしまいます」

「わかった、わかった。わかったから耳元で大きな声を出さんでくれ……」


 リュウトはアリアに小声で聞いた。


「ルシーン卿って?」

「はい。ルシーン卿は、このリト・レギア王国の宮廷魔導士の一人です。だけど、闇の魔導士の門下だったと噂される人物で……。ですがお父様は、出自は関係ないとして地位をお与えになったのです。宮廷魔導士は、ある程度の経験がなければなれないのですが、特例として、ルシーン卿は若くしてその座に着きました。そのせいか、彼――ルシーン卿に対して反感を抱いている宮廷魔導士も少なからずいるようです……。聡明な方なのですが、人嫌いらしくて、公の場にはほとんど姿を現しません。だけど唯一、兄様とは仲が良いみたいです」

「へえー」


 朝食が終わると、アリアは城の案内を申し出た。大広間、食堂、中庭、大礼拝所、兵士の訓練場などなど、絢爛さやスケールの大きさに驚く場所が多く、王城探索は想像していたよりも楽しいものだった。楽しかった理由は他に、アリアと長く一緒にいられたからもある。飛竜を一撃でノックアウトさせる実力を持つ武闘派王女だが、女の子らしい服装で楽しそうに王城を案内するアリアは、生き生きとして見えた。アリアはドラゴンを倒す戦士ではなく、おしとやかな王女様の、こちらが本来の姿なのだろう。


 王城の中ですれ違った人々は、アリアに必ず頭を下げるか、敬礼の所作をした。その様子をみたリュウトは、アリアは本当に王女様なんだなあとまたもや実感した。


 宝物庫や国政に関わる場には、当然だが案内されなかった。とにかく、一日回っただけでは覚えきれない部屋の数だった。


 案内された場所の中で、特にリュウトが驚いた場所は、東のうまやの反対側に位置する飛竜のための屋舎だった。名前をそのまま、飛竜舎と呼ばれている建物で、そこでは、飛竜に乗って戦う竜騎士たちの相棒となる飛竜が繋ぎ止められていた。山中で出会った飛竜よりは獰猛ではないものの、百体をゆうに超える数の飛竜が、さっきまでリュウトが眠っていた部屋の近くにいたのかと思うと、冷や汗が出てくる。アリアはこのリト・レギア王国を竜騎士の国とは言っていたが、ファンタジーの世界を実際に目の前にすると、頭がついていかなくなる。ファンタジーな光景や出来事には、何年かかっても慣れそうにない。


 ひとしきり案内が終わったころ、一人のメイドがアリアに話しかけ、首を横に振った。アリアは残念そうな顔をした。そしてリュウトに向き直り、話しかけた。


「リュウトさん。ごめんなさい。金色のドラゴンについて知っている者を探させたのですが、誰も存じ上げないと……。兄様は他国へ遠征中ですし……。お役に立てず、申し訳ありません」

「いや! 謝らなくてもいいよ! 探してくれてありがとう。お城の探検も楽しかった! アリアってすごいところに住んでるんだなーって! あはは……」


 アリアはリュウトのために一生懸命頑張ってくれたのだ。なので、なるべく暗い空気にはしたくない。


「これからも捜索は続けます。一日でもはやく、リュウトさんがご家族と会えますよう……。今日はもうお疲れでしょう。このあとは、自由におくつろぎください」


 そこで、アリアと別れ、リュウトは与えられた客用の部屋に戻った。


「はー。おくつろぎください、とは言われたものの、こんなお城にいるのって、落ち着かないよなー……。飛竜だってうじゃうじゃいるし」


 リュウトはしばらくゴロゴロしたら、部屋を出た。どうにも落ち着いて過ごすなんてできなかった。先ほどアリアが案内してくれた、王城の中にある図書室へ向かってみることにした。そこは、五階建ての塔の全部が図書室になっていて、一生かかっても読み切れなさそうな数の書物が蔵書されている。学校の図書室よりずっとワクワクする空間に思えた。と言っても、リュウトは日頃本を読まないので、図書室にワクワクしたことは一度もなかったが。


「人に頼ってばかりなのはよくないよな。金色のドラゴンについて、自分で探せる分は探してみよう」


 リュウトは本棚から適当に本を手に取り、読んでみた。手に取ったのは、全く関係のない薬草学の本で、目的のドラゴンに関する情報は載っていなかった。


 しかし、リュウトはとある重大なことに気が付いた。

 というより、何故いままでちゃんと考えようと思わなかったんだろうか。

 リュウトがしゃべっている言葉や、本に書かれた文字は、日本語ではないのだ――。

 それなのに、あたかも母国語のように話せるし、読むことができる。国語も英語も、リュウトは壊滅的な成績だったにも関わらず、この異世界の言葉を第一言語のように扱うことができるのだ。


「なーんだこれぇ……」


 異世界へ転生した際に身に着いた特殊スキルのようなものなんだろうか。通常なら、異世界の言語のバイリンガルになれたなら嬉しく感じるのかもしれないが、身に覚えなく自分に魔法のようなものがかかっているのは、なんとも不気味に感じられた。これ以外にも、何か特別な魔法はかかっているんだろうか。リュウトは少なからず不安を覚えた。

 とはいえ、非常に便利なスキルが備わったことには違いないので、ひとまず感謝して、探し物の捜索に当たった。


 引き続き金色のドラゴンについて調べていると、リュウトがいる階の上の階で、大きな声でおしゃべりをする若い二人の婦人の会話が聞こえてきた。この図書室は塔全体が吹き抜けになっており、上の階の音も聞こえてくる。


「ねえ。アレーティア様ってば、昨晩、風竜に乗って帰ってきたそうよ」

「ええ! 風竜に?」

「そうなの。封印されていたはずなのに、解放して帰ってきちゃうなんて」

「王族とはいえ、女なのにね。いつもいつも、何のために点数稼ぎしてるんだか」

「そんなこと、知れたことでしょ。モイウェール王の実の子どもではない王太子ソラリス様に対して、牽制してるのよ。自分こそが真の王位継承者だってね。ずっと子どもがいなかった王が、王弟の子どもだったソラリス様を養子にして、ソラリス様を次期国王決めた途端に、アレーティア様ができたというんだもの。あの子はソラリス様の邪魔だてをするために、生を受けたのよ、きっと――」

「だからこれみよがしにアピールしてるのね。ああ、こわい女!」


 会話の内容の半分は理解できなかったが、アリアの悪口だということはわかった。

 このまま図書室にいるのは気分が悪いな、と思い、リュウトは自分に与えられた客室に帰ることにした。


 ベッドの上に転がって、家の天井よりずっと高い位置にある天井を眺めた。


 ――アリアは、苦労してるんだな……。


 一呼吸して、リュウトは決めた。何があっても、自分だけはアリアの味方でいる。リュウトが知り及ばない一国の王女としてのしがらみが彼女にはあるのだろうが、日本人東京生まれ東京育ちの異世界人である自分には、王国のしきたりや身分なんて関係ない。アリアは強くて、そしてやさしい子だ。彼女がいなければ、とっくに飛竜の餌になって死んでいただろう……。


「んんっ? こっちの世界でまたドラゴンに殺されたら、どうなるんだ? 元の世界に帰れるのか? 試してみようにも、本当に死んでしまったら嫌だしなあ」


 リュウトは、ベッドから飛び降りた。

 そしてガッツポーズを決めて叫んだ。


「アリアに伝えておこう。オレは君の味方だって――」


 こうと決めたら、力がみなぎってきた。はやくアリアに伝えたい。

 リュウトは勢いよく、扉を開けた。アリアを探しに行かなくては!


「アリアッ!」

「ええっ! あ、はい!」


 なんと、勢いよく扉を開けたら、ちょうどアリアも扉を開けようとしていたところだった。


「あああっ? えええ! えっと、えっと」


 予想だにしていなかったアリアとの遭遇に、しどろもどろになってしまったが、


「アリア。聞いてほしい。オレ、オレは君の味方だから――だから、困ったらなんでも協力する! 嫌なことがあったら我慢しなくていいから。君がオレを助けてくれたように、オレも君の力になりたいんだ……本心からそう思ってる!」


 と、言い切った。珍しくリュウトは、本心を言い切ることができた。

 リュウトのその言葉を聞いて、明るくなるかと思われたアリアの顔には、正反対の色が浮かんだ。


「ああ……。わたしに対するよくないうわさを、リュウトさんはどこかで聞いてしまったんですね……」

「あ……」

「そうなんですね……」

「……」

「わたしが、王位継承権を狙っている――とでもいううわさですかね。……ありえません。わたしには、そのような器はありません。兄様の才覚を間近で見てきたから、そう思うんです。わたしは、兄様に絶対に勝つことはできない。ドラゴンを駆る才能も、勉学も、先を見る力も。到底兄様には及ばない。だから、少しでも兄様のお役に立てるよう、自分にできる精一杯のことをやっているだけなんです」


 アリアの真っ直ぐな瞳には、強い意志が宿っていた。

 彼女は、強い。精神的な強さを、十歳そこらで身に着けている。リュウトが守らなくても、彼女なら十分に困難を乗り越えていけるだろう。


「アリア……」

「ああ、ごめんなさい。少し、取り乱してしまいましたね」

「そんなことない。ごめん、オレはバカだった。アリアは、ずっと頑張ってきたんだな……。オレが家でだらしなくゲームをやっていたり、お昼過ぎても寝ている間にも、ずっと……。オレ、アリアのこと、すげーって思う。きっと、アリアがいれば、この国はもっといい国になるよ! アリアは立派だよ。変なうわさを流す奴の言葉なんて、気にしなくていいよ!」

「リュウトさん。ふふふ」

「えっ! オレ、何か変なこと言った?」

「いえ……。そんなに熱く褒められるとは思っていなくて。ありがとうございます。リュウトさん。あなたは、いい方ですね……」


 そう言って、アリアは笑顔を見せた。自分の勢い余った言動がなんだか照れくさくなって、リュウトも笑い返しながら、頭をかいた。


「そういえば、なんでアリアはこの部屋の前にいたんだ?」

「あっ、そうでした。リュウトさんを呼びに来たんでした。国外に遠征に出ていた兄様と、王国竜騎士団屈指の精鋭部隊、レギアナ・セクンダディの騎士の方々が、もうそろそろ帰ってくるそうなのです。飛竜舎の前に、行きましょう!」


 アリアに連れ出され、リュウトは飛竜舎の前に来た。そこにはすでに、たくさんの近衛兵や従者たちが集まってきていた。さらに近くで見ようとする者は、城壁の内側に設けられた通路の上に立っている。その沸き上がりから、アリアの兄、王太子ソラリスと王国竜騎士団の精鋭部隊、レギアナ・セクンダディの人気ぶりをうかがい知れた。


「来たぞー! セクンダディが帰ってきたー!」


 飛竜舎前にいた誰かがこぶしを振って叫んだ。

 皆、一目見ようと押し合った。その押し合いに巻き込まれ、リュウトはもみくちゃにされた。


「リュウトさん!」

「へ、へーき。へーき……ん?」


 リュウトの目に、ドラゴンにまたがった七人の竜騎士たちが見えた。夕焼けで赤く染まった空の上から、王城を目指して真っ直ぐ飛んでくる。


「あれが……王国竜騎士団の精鋭……レギアナ・セクンダディ……」


 竜騎士たちは、飛竜舎の前の広場で自らの御する飛竜を着地させた。

 七人の竜騎士たちは、全員が皆屈強な戦士だった。体格が良く、飛竜舎の前で彼らを見ようと集まってきた近衛兵たちとは風格やオーラが全く異なった。

 六人の竜騎士が円を描くように整列した中央に、肩まで伸ばした黒髪の長身の男が飛竜を着地させ、降りてきた。その黒髪の竜騎士は同性のリュウトでも、息を飲むほどの美形だった。彼が操っていた飛竜は、リュウトに襲ってきた飛竜や他の竜騎士たちが駆る飛竜よりサイズが一回り大きい。

 黒髪の男は、飛竜を近衛兵の一人に任せると、王城に向かって歩き出した。他の六人も、彼の後について同様に歩き出す。


「兄様!」


 黒髪の男に向かって、アリアは呼び掛けた。

 黒髪の男は、そのアリアの声に気が付いた。


「兄様! おかえりなさいませ!」

「アレーティアか」

「遠征、お疲れ様でした。兄様ならきっと無事で帰ってくると信じていましたが、予定より随分とはやかったですね! 流石兄様です!」


 アリアの話をさほど聞いて無さそうな黒髪の男は、アリアの兄王子、ソラリスだった。冷たい印象を受ける瞳は、エメラルドグリーンの色をしており、細身だが必要な部分にしっかりと筋肉がついた身体にはドラゴンの意匠を凝らされた鎧と、髪色と同じ漆黒のマントを身に着けていた。女性たちが、このイケメンにキャーキャー言う気持ちがわかる。それくらい完璧な――いい男だった。


「そちらは?」


 ソラリスがアリアに聞いた。


「はい、この方はリュウトさんです。竜の試練へ行っている間に出会いました。リュウトさんがいなければ、わたしは竜の試練を乗り越えられなかったでしょう」


 ソラリスはリュウトの前に立ち、リュウトの顔をじっと眺めた。

 身長差が二十センチ以上あるので、ソラリスがリュウトを見下ろす形だった。王子は表情を変えずにリュウトを見ていたため、リュウトは蛇に睨まれた蛙のような気分を味わった。


「妹が世話になった」


 ソラリスがリュウトに右手を差し出した。正直、顔色を変えないソラリス王子がとても怖かったけれど、リュウトは王子に差し出された手を震えた手で握り返した。


「いえ、ボクの方が妹さんに助けられたんです」


 握手が終わると、ソラリスはマントを翻して王城の中へ入っていった。六人の竜騎士たちも後に続く。

 なんて画になる光景だろうか。


「カッコいい……」


 リュウトはこころで思ったことを口から漏らしていた。


「カッコいい……じゃなくて、ガッゴイ゛イ゛……」


 リュウトは、憧れの眼差しでソラリスとセクンダディを見送る近衛兵や従者たちと、同じ眼差しで彼らを見送っていた――。

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