#4

「明日、緊急の国際交流パーティーが行われるだと?」


城に戻ってすぐ、リチャードはメイドのアリスからパーティーの話を聞き、怒りのあまりに声を荒げた。


「なぜお前は、勝手に出席すると、返事を出してしまったのだ?正式なお誘い以外は全てお断りだと言ったはずだろう!」


「すみません…国際交流パーティーと聞いたので王国主催で行われるものだと勘違いしてしまいまして。開催も明日だし、早急にお返事しなくてはと思い…」


アリスは執事の形相に少々涙目を浮かべている。“国際交流“などと謳っているが、王国主催で行われる正式なものではなく、隣国の王子、ポールが主催で行われるものだ。主催者が小さく書かれていたため、アリスが勘違いしてしまうのも無理はない。無論、リチャードであればその小さな文字も見逃すことはないが。


「まぁまぁ。そんなに怒らないで。間違いは誰でもあることよ。それにしてもパーティーなんてだいぶ久しぶりな気がするわ。気合入れちゃおうかしら。」


リンはいたずらな笑顔をリチャードに向けた。彼が次にどういう反応をするのか、彼女にはお見通しだった。


「何を言っているんですか?パーティーはお断りしますよ。あなた様にどれだけ悪い虫がたかってくると思ってるんですか。」


リンは確かに綺麗で、権力も地位も持っている。全くモテないというわけではないが、それにしたってリチャードは彼女のことを少し買い被り過ぎなところがある。


「一体いつ、私に悪い虫がついていたのよ。」


外交の際は必ずと言っていいほど、リンに近づこうとする男どもを睨みつける執事が側にいる。そんな状態で安易に話しかけて来る者はいない。


「それに今回は参加すべきよ。だって…」


リンは意味深に言葉を続けた。


「あなたに呪いをかけられてすぐにパーティーが開かれるなんてちょっと怪しくない?もしかしたらあなたに呪いをかけた人物がここでわかるかもしれないわよ。」


執事の目の色が変わった。


「なるほど、それは面白いですね。今回ターゲットを私にしていたから良かったものの、もし同じ奴がリン様に何かしようっていうのであれば、犯人を特定してこらしめておく必要がありそうですね。」


執事はノリノリだった。彼の様子を見て、リンは久々にパーティーに行ける!とうれしそうにしていたが、


「もちろん、リン様がはめを外しすぎないように、私がリン様に付きっきり、というのがパーティー参加への条件です。」


リチャードは浮かれているリンに釘を刺した。いつものことかしょうがないと、半ば諦めて、リンははーいと空返事をした。


「そうと決まればアリス、明日のドレスを決めたいから手伝ってちょうだい!」


リンはすぐ近くにあったメイドの手を引っ張って、衣装室へと走った。


「私もお供いたします。」


「だーめ。衣装室は男子禁制よ。リチャードはあとで飲むお茶の用意でもしておいて!」


「あまりハメを外しすぎないでくださいね!非公式とはいえ一応他の国の方もお目見えになりますからね!」


リチャードは走っていく主人とメイドに叫び、彼女たちについていくのは諦めて厨房の方へと向かった。

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