デブリンの国
とある世界のとある場所に、美食の国と呼ばれるデブリンという名の国がありました。
その国には世界各国の食材が溢れ、世界中から料理の腕自慢の人たちがその腕を競いあい、美食家たちが舌鼓を打つ国でもありました。
その国民的な気質故か、この国の民は老いも若きも、王様や貴族や平民など関係なく太っているので、その体型からいつしかデブリンの国と呼ばれるようになったのです。
そんなデブリンの国では、毎月何かしらの催しものをやっていました。
大食い大会であったり、料理やデザートの新作の御披露目であったり。
とにかく、食に関わる何かしらの催しものをしていました。
ただ、みんな美食家であるが故に病を持つ国民が多く、王様をはじめとした国の重鎮たち自身も患っているせいか、そのことに頭を悩ませていました。
そんなある日のこと。
成人したばかりの末姫様が、病に倒れてしまいました。そして末姫様を見立てた宮廷医師は悲しそうな顔をして言ったのです。
「このままでは、末姫様のお命が儚くなってしまうでしょう」
と。
そこで王様はついに「身分に関係なく、美味しくて健康的な食事を作れた者に姫を与える」と、おふれを出したのです。
そのおふれに料理人たちは知恵を出しあって張り切り、たくさん料理を作りました。けれど、なかなかうまくいきません。
そこで料理人たちは美食家に相談しました。
「美味しくて健康的な料理を知らないか」
と。
けれど、美食家たちも首を横にふるしかありません。なぜなら、美食家たちも知らなかったからです。
美食家たちは知らない料理があるのは許せないと、自分のプライドにかけて商人たちに相談しました。
なぜなら、商人たちは世界中を回っているからです。
それならばと、商人たちは自分がよく行く国の、この国にはない料理を教えました。
それを聞いた美食家たちは、料理人たちにそれを教えました。
話を聞いた料理人たちは、その料理を再現しようと頑張りましたが、やっぱりうまくいきません。
けれど、料理人たちは頑張りました。
調味料やスパイスが足りなければそれを商人たちから買い求め、美食家たちや商人たちに味見をしてもらいました。
それを何度も繰り返し、ようやくできたのは、素材の味を生かした東方にある国の【ワショク】と呼ばれる料理だったのです。
その料理を王様に献上しました。
それを見た王様や王妃様は、最初戸惑いました。いつもと違う、想像したこともない料理が出てきたからです。
いつもはたくさんのお皿に一品ずつ盛られて出てくるのです。けれど、今回出されたものは、大きなお皿に一口ずつ食べるように盛られた料理でした。
中にはお花の形や葉っぱの形をしたものまでありましたから、二人とも戸惑ってしまったのです。
いつまでも戸惑っているわけにはいかないからと、見た目も鮮やかで華やかな【ワショク】に注目します。そして、食べなければ味はわからないからと、王妃が白いバラの形になっているものを恐る恐る口にしました。
「まあ……! お肉ですわ!」
その白いバラの形になっているものは、薄く切られて茹でられ、バラの形にしたお肉でした。
その他にも野菜やお魚など、味付けも色もさまざまありましたから飽きることなく食べ続け、いつの間にか料理を完食していました。
王様も王妃様も、あれは美味しかった、これはこうだったと二人で満足げに語ります。
そして一番美味しくて健康的な料理を作った料理人に姫を与えることを決め、その料理人を呼ぶように言いました。
呼ばれて来たのは青年でした。王様から姫を与えると言われると、青年はそれを断ったのです。
どうして断ったのか、王様は聞きました。
「僕は、末姫様がほしくて料理をしたわけではありません。末姫様だけではなく、王様や王妃様たちにも健康になって長生きしてほしくて、料理を作ったんです」
そう言いました。
その心意気やよしと王様も王妃様も重鎮たちも感動し、それを聞いた末姫様も自ら
「この方と一緒にいたい」
と青年にお願いをしました。本人から言われてしまっては、青年も無下には断れません。
なので、青年はまずは友達から始めましょうと、末姫様と友達になりました。
友達から始めた二人は、いろんな話から始めました。好きなもの、嫌いなもの。料理や城下のことや他の国のこと。
たくさん話して、青年の作った料理を食べて少しずつ健康を取り戻した末姫様。いつしか二人はお互いを大切に思うようになり、二年の月日が流れていました。
愛し合うようになった二人は王様と王妃様に許しをもらい、結婚しました。
結婚した二人は城下町に家を構え、そこを食堂にしました。食堂で出されているのは、王様たちに出した様々な料理と、この国の料理です。
そこから広がった料理は料理人たちも真似をし始め、料理人たちが作った料理を美食家たちが美味しそうに食べています。
料理を食べた人たちはいつしか健康になり、いつまでも幸せに暮らしました。
後世の歴史家はいいました。
美食と健康の国、デブリンに行けば美味しい料理を食べられ、健康になれると。
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