第16話
不定形の体を揺らしながらゆっくりと近づいてくるスライム。
それに対峙するのはメイド服を着た銀髪の少女。
背が低いのもあるが、自分の背丈ほどもある槍を構えている。
しかし、その構えている槍は質素な木製の槍である。
彼女の名前はノエル。
今日、FCOにデビューしたばかりの新米冒険者であった。
ブルン。
一匹のスライムが体を大きく震わせると、不定形の体が波打ち触手を生やす。
その触手が、ビュッン!と伸びて、ノエルの顔めがけて突き進む。
「フッ!」
ノエルはその触手の槍を危なげなく首を振って避ける。
ミディアムヘアの銀髪一本掠ることなく避けて見せた。
ふわりと髪が広がる。
ブルン!とノエルの大きな胸が揺れる。
ノエルはその弾む胸の揺れを利用して槍を突き出した。
ドブチュッ。
突き出された槍は真っすぐにスライムの核を貫いていた。
ビシャリと弾ける演出と共にスライムは倒された。
そこから止まる事なくノエルはステップを踏んで槍を突き、払い、振り下ろす。
そのたびに、1匹、また1匹とスライムが核をつぶされて弾け飛んでいく。
「へぇ~。ノエル結構動けるのね」
「最初の二日酔いやカジノでスッタりしたりでポンコツ感ありましたけど、運動神経はいいみたいですね」
「飛んだり跳ねたり弾んだり、羨ましいわね」
「どこ見て言ってるんですか」
「それじゃぁせっかくだし」
どんどん、パフパフ~。
「って、何やってるんですかお2人さ~ん」
太鼓とラッパのおもちゃでにぎやかな音を奏でるクーガとソラの2人にツッコミを入れるノエル。
「なにって」
「お前の為にスライムを呼び寄せてるんじゃないか」
2人が使っているのはチンドン屋の太鼓みたいなモンスターを呼び寄せるだけでなく、りぽっぷの臭気も早める効果のあるアイテムである。
何気にランク:☆☆☆☆のレアものだ。
「気持ちは嬉しいですが、あまり増えると回避が難しくなって、ノエルってばこう見えて布の服1枚しか着ていないんですよ。」
華麗にスライムの攻撃を回避しているノエルだが、逆にゆうとまともに攻撃を受け止められないのである。
現在ノエルはメイド服を着ているが、これは見た目だけの話で防具は初期装備の布の服だけなのである。
ちなみにFCOでは下着まで装備として存在するのに、ノエルが布の服1枚なのはカジノにつぎ込んだからである。
ノエルにデフォルトで見た目をメイドにする装備(非売品)が無ければ、今頃、太ももの付け根ギリギリの丈の半そでシャツ1枚で、かつ、ノーパンで飛んだり跳ねたりしている姿が見られていたはずだった。
「大丈夫、大丈夫。今やられても失うものは何も無いから。それ、もう1匹追加」
「いやあああああああああああ!」
「社長ってやっぱりSだなぁ。」
ぺしりとクーガは頭を叩かれた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「よくやった。スライムだけでも150匹は倒したはずだよ」
ソラのその声に疲労困憊でうつむいていたノエルが顔を上げる。
「30匹で15ゴールドだから75ゴールド」
「ドロップした分も入れると200ちょいだね。」
「フッ、ノエルやりましたよ」
「これでパンツぐらいは買えるね」
「がふっう。」
ノエルはついに力尽きて倒れた。
だってこのゲーム下着類の値段が高いんだもの。
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