第10話
「とりあえず、剥製のことは置いておきましょう」
コホンと咳払いをしてからノエルがきりだす。
「まずフラワーガーデンの皆さんの役割とメインクエストの進捗状況を確認させてください」
フラワーガーデンの全社員がギルドハウスの広間で大きなテーブルの席についてから、ディスプレイの前に立ったノエルが進行役となって会議が始まった。
FCOにはメインクエストがある。
その内容を説明すると、1万年と2000年前にプレイヤーたちの住む世界に外の世界からの侵略者がやって来た。
2度の侵攻をしのいだこの世界だが、その戦争で神々は傷つき、多くの勇者を亡くしてしまった。
しかし、またしても外なる邪神の侵攻の予兆が見つかったため、世界はそれに備えるために準備を進めることにしたのだ。
数多くの勇者の末裔たちは冒険者となって未踏の大地を探索して国を広げる使命を帯びた。
しかし、未踏の地に踏み出してみればすでに邪神の尖兵たちの影があった。
事態を重く見た各国の王たちは同盟を組み、来る邪神との戦いに備えて
と、いうものだ。
プレイヤーにとっては、グランドオーダーとセルフオーダーの二つをプレイすることになる。
グランドオーダーの方はプレイヤー全体で行う攻略である。
プレイヤー全員のプレイ状況が反映されて世界が動いていき、世界のストーリーが進行していき、プレイヤー全員がその恩恵を受けられるというものである。
対して、セルフオーダーはプレイヤー各人が進めていくストーリーである。
このセルフオーダーのメインストーリーを進めることで、サブイベントや各種機能などの個人的システムの解放に繋がっていく仕様である。
「まず、グランドオーダーのの未踏区域の踏破率が15%なのは多いか少ないかです」
この踏破率は元のプレイヤー世界の全体を100%としたのに対する数値である。
これを多いか少ないかと言われれば、
「これに対しては僕に意見があります」
手を上げて意見を言ったのは黒沢だった。
「あっくん意見をどうぞ。」
そう言われて立ち上がった黒沢のアバター。
名前は「あっ」である。
だからあっくんである。
黒沢のアバターは中肉中背のヒューマンタイプである。
あまり飾りっ気がないのかリアルと同じ阿良〇木君に似た顔を眠そうにしている。
メインジョブは「盾騎士」。大人数を守るのを得意とするキャラ構成であった。
現在も、キャラに似合わない大きな青い鎧に身を包みながらも態度は小さく話し始める。
「この踏破率ですが、これまでのプレイヤーの行動はキャラを育てて、国内を回ることに重点が置かれていました」
あっくんのその言葉に他の社員も「うんうん」とうなづく。
「まだリリースされてから半年、何処も難易度が高めな未踏区への挑戦を見合わせてきました」
そこでディスプレイに映像が映し出される。
そこにはこの半年の攻略率の推移が折れ線グラフであらわされていた。
「ご覧の通り、この二か月で伸び始めています」
あっくんはちょっと熱く語った。
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