第9話

「ハァハァ、皆さんお見苦しいところをお見せしてしまってすみません。くっ、アンドロイドでも二日酔いになるとは……二度とお酒は飲みません」

 そう言っておきながら飲むんだろうなぁ、と思わせるノエルは、前日に自分もビールを飲むと飲み会に参加した。

 結果があれである。

 FCOの攻略のために今日は全員ログインするようにと言った本人がである。

 それと、リアルではミーゴ製の人型アンドロイドだが、FCOの中では人型のサンタのトナカイだったはずのノエルが、現在FCOの中だというのにメイド服を着ていた。


「昨日のトナカイビキニはどうしたんだ」

「おや、クーガさんはあちらがお好みですか」

「いちちち、社長つねらないで」

 FCO内のソラの定位置、クーガの肩の上でソラがクーガの耳を引っ張る。

「別にあっちがいいというわけでは無いけど、トナカイっていう設定はどうしたんだ」

「もともと私をはじめとするPNシリーズを手に入れられるクエストは複数存在したんですよ。クーガさんたちが手にしたのがたまたまサンタさんのトナカイだったというだけです」

「つまりゲーム内の設定は変わるのか」

「変わります。一応皆さんと同じプレイヤー扱いになりますけど、ゲーム内の設定ではかつて邪神たちと戦った時に作られた神の尖兵、その発掘品、という扱いになります」

「つまりアンドロイド設定に置き換わるんだな」

「そうゆうことです。皆さんもそうゆうことでよろしくです」


「「「はぁ~い」」」

 という声が響いたのは、フラワーガーデンのギルドハウス、その本部である。

 FCO内にある人間族が住む3大国のひとつ、ブレナム王国にある、イギリス風の街並みに溶け込むお屋敷である。

 赤い絨毯に石造りの暖炉、壁にはトナカイの首の剥製が飾られていた。


「ねぇ、あれって、ノエルちゃんの剥製?クーガ君が飾ったの」

 屋敷の壁に見慣れないオブジェクトがあったので、ありかことプレイヤーネーム「ミーア」が訊ねる。

「いや、俺は知らないぞ」


 ミーアは青いショートボブに猫耳を生やしたシーフだ。

 女性として平均的な身長にちょっと生意気な感じのお胸、きゅっと締まったウエストとプリッと突き出たお尻、尻尾も生えたヤングアニマルな少女。

 装備はチューブトップブラに袖なしのハーフジャケット、ホットパンツとニーソックスに加えて脛丈のブーツ、腰には太い革のベルトがあり2本のダガーを下げていた。

 ちなみに種族はゲーム内の転生クエストをクリアすれば変更できる。

 が、

 種族が変わると体形などが変わることもあり、その変化に適応できるかがクエストで試される。

 意外と難しいらしい。


「その壁の剥製ですか」

 ミーアの質問に答えたのはノエルだった。

「それでしたらノエルを手に入れたおまけです。一種のトロフィーですね」

「あっ、これギルド全体に物理防御1%と氷結耐性2%付与の効果がある」

 というソラのつぶやきに、自分のおまけが以外にも役立つことにノエルは笑顔で固まった。

「アレ?」

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