第5話

 12月25日の朝、薫と蒼が朝チュンしていた時に会社に届けられたのは、前日のゲーム内のイベントでサンタさんからお礼に貰ったトナカイ娘のノエルだった。

 ノエルと同じ姿の人形ではなく、限りなく人間に近いアンドロイド、だそうだ。

 しかも、機体をコントロールしているAIはゲーム内に居たあのトナカイと同じらしい。


「らしいとか要領を得ないのは説明書に書かれていたことを言ってるだけだからね」

「蒼ちゃん、送られてきたのはノエルちゃんだけですか」

 早速ノエルを間近で観察し始めたありかが蒼に訊ねた。

「他にはノエルを製造するのにつかわれた技術のデータが入ったフラッシュメモリーね。義足とかの開発にすっごく使えそうなやつだから金にはなるわよ」

「つまり、我々はついに実績を手に入れたんですか」

「そう言うこと。これで出資が増えるかもしれないわね」

「僕たちの給料増えますか」

 黒沢が現金なことを聞く。

「株主次第」

「はい、では株主として言います。ノエルちゃんを私にください。そしたら出資額増やします」

 実家が金持ちでアイドルで動画収入もあるありかが手を上げる。

「待てよお前1人で決めるなよ」

 薫がいさめるけど、

「残念だけどこの子、ウチの株ほぼ買い占めてるわよ」

「マジかよ。親とは喧嘩中じゃなかったのかよ」

「仲直りしました~。パパったら私の会社にも興味持ってくれたから、私、オーナーになるのも近いわよ。でもそうなっても社長は蒼ちゃんだし、皆とは対等の仲間ね」

「良かったんですか、社長」

「まぁ、金だけ出す奴らに頭ペコペコ下げなくて済むようになるから助かるけど」

「苦労したんですね」

 蒼のうんざりしたような顔で薫は納得した。


「ところでこのメイド服、どうしたんですか」

 久我峰くんの私物?とか聞いてくるありかに。

「いや同梱されてたやつだ」

「同梱されてたのに裸で送られてきたのよ」

「おかげで社長にあらぬ誤解をされましたよ」

「なになにどんな誤解」

 なんか面白そうだな、と感じてありかが詰め寄る。

「私はてっきり、薫くんが会社でダッチワイフを受け取ってるのかと思っちゃたのよ」

「蒼ちゃん、ダッチワイフは古いよ。今はlovedollって言うんだよ」

「何でそこだけ流暢に言った」

「オシャレっぽくだよ蒼ちゃん。今どきはこういうのもオシャレになってるの」

「知らないよ」

「それでどうなったの。成田離婚」

「ロリババァが好きだといったのは嘘か!ホントはロリ巨乳が好きなのかあああああああ!」

「って怒られまして」

「それで久我峰くんはどう答えたの」

「オッパイはlikeで蒼のことがloveだああああああああああ」

「あははははははははははは。バッカでい。蒼ちゃんもそんなので納得しちゃったの」

「まぁね、ああいう勢いのあるのに弱いのかな私。」

 そう言ってビールをあおって誤魔化す蒼だが、顔が赤いのは別に酔っているからだけではないだろう。

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