第3話
「男子たちってほんと仲いいよね」
「ちょっとは女の子の相手もしなさ~い」
と、男だけで話をしてたら女性陣からのお誘いが来た。
というか、蒼はずっと薫の膝の上なので、薫が男子と盛り上がると恋バナの続きができないのである。
「すまんすまん。俺と黒沢と茂さんはずっ友だからな」
「だから僕を仲間外れに――――
「ワシら3人、生まれた時は違えど死ぬときは一緒と誓ったのじゃ」
「茂さんもそっち側!」
また飛鳥が叫んだ。
「茂さん、茂さん。ボクも先輩も茂さんに付き合ったら早死にしちゃいますよ」
「なんの、ワシはあと50年は生きるわい」
実際、ホントに50年くらい生きそうなくらい茂さんは元気である。
茂さんはかの大戦を生き抜いた本物の戦士である。
髪は真っ白になっているけどしっかりと生えそろっていて、肌もたるむことなく深いしわを刻んでいる。
眉間の眉の間には、クスリのトローチのような凸凹があるが、これは戦争で付いた銃創である。
戦時中、撤退する味方の為に殿として残りそのまま行方不明となり、死亡したと思われていた。
が、重傷を負い、アメリカの捕虜となっていたが戦後無事に帰国して家族を驚かせたそうだ。
「だからなんで僕だけおざなりなんだ!」
また飛鳥が叫んだ。
「で、こんなのはいいからどっちから告白したか聞かせなさいよ」
「だから――――」
「しっしっ」
「…………いいもんいいもん」
「ほら~、飛鳥君がいじけちゃったぞ~。Qべぇ慰めてやって」
「は~い、喜んで」
いじけて隅で膝を抱え始めた飛鳥のもとにQべぇと呼ばれた女性がにじり寄っていく。
彼女の名前は
元看護士の攻略部の課長である。
ゲーム内ではプリーストとしてヒーラーをこなしている。
ちょっとおっとりしたぽっちゃり系巨乳のお姉さんキャラだ。
実は飛鳥のことが好きでみんなに応援を頼んでいたりする肉食系でもある。
「まぁ、社長が久我峰さんとくっついた以上、あちらがくっつくのも時間の問題ですね」
そう言うのは経理担当の
知的なめがねが光るキャリアウーマン。
ビシッと決まったタイトスカートの似合う女性である。
何気に既婚者。
旦那は専業主夫。
2児の母とは思えないやせ型。
そして腐女子。
FCOにはたまにログインするリアルがお仕事の人。
今日の忘年会も少しだけ参加して家族と過ごすので飲み物はソフトドリンクだけ。
「あっちはあっちでくっ付いてからからかえばいいわよね。それよりも久我峰部長から告白したんですよね。そうですよね」
そう言って薫に詰め寄るのは薫の
フラワーガーデンでは資材部の部長をしている。
ようはFCOでの生産職だ。
薫と会社がかぶったのは完全な偶然だったが、蒼とは学生時代からの友人である事からお歳はお察しである。
彼女はまぁ、ちょっとお節介な叔母さんくらいの関係だが――
「なんですって~」
「痛たたた、すみません。姉です。少し年の離れた姉です」
糸目のくせにやたらと迫力のある笑顔は父親譲りか。
ビール片手にグイグイ近づいてくる女性は迫力がある。
何にしても、彼女が薫と蒼をくっつけようとしていたのは事実であり、どちらから告白したかが気になるご様子だ。
「一応、オレから告白した」
「よし、よくやった」
一応、合格のようだ。
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