エピローグ
第1話
「それでは皆さん、まだ発足してから半年に満たない会社なれど、無事に年が越せそうなのでそれを祝して――――
「乾杯~~~~~~~~~~~~~~!」
「いえぇ~い」
この時、久我峰薫はリアルで彼女を担いでいたことにドキドキしていた。
シナモンのような甘い香りが鼻孔をくすぐる。
それに、肩に乗っかている蒼のお尻の柔らかさ。
軽いけどしっかりとした存在感がある彼女の重み。
それらが昨晩の行為を思い出させてまだお酒を飲んでもいないにもかかわらず、顔が赤くなっていることを自覚してしまう。
場所は居酒屋「朱雀」。
今日はクリスマス当日の25日、そんな日に「株式会社
フラワーガーデン」の忘年会を開かれていた。
にもかかわらず参加者は意外と多い。
と言うのも新興の会社だけに若いものが多く、相手がいない者はこの会でぜひお近づきに成れる相手を求めているのだ。
「さぁさぁ無礼講じゃ。みんな飲んで食べなさい」
そう締めくくった蒼は薫から降りて自分の席に座る。
その後薫も自分の席に座った。
「それでは一発目から行きますよ。このクリスマスに何か進展のあった人は報告だぁああああ」
という言葉で一杯目のビールを飲みそこない噴き出してしまう薫。
「おやおや~、どうやら久我峰くんには何かが有ったご様子ですなぁ」
そう言って薫に近づいてくるのはフラワーガーデンの広報部部長にして、人気のネットアイドル「星野ありか」である。
彼女は動画配信を通じてフラワーガーデンの広報を担当している。
アイドルとしての人気もあり、彼女の公式チャンネルは登録者数30万人はいるほどだ。
正直、今フラワーガーデンで業績1番なのは彼女だろう。
その彼女がこの飲み会に参加して、かつ盛り上げ役を買って出ているのは、間違いなくこういった恋バナが好きだからだろう。
薫がチラリと蒼の方を見ると、「ぷっはぁぁぁぁぁぁ。ビールが旨い」と子供みたいな容姿なのにオヤジ臭い飲み方をしていて、こっちには興味がなさそうだった。
「さぁさぁ、久我峰くんはこちらに来なさい」
と、飲み会の席の奥、俗に言う上座に連れてこられた。
ほんの10人に満たない社員たちだが、飲み会において貸し切りの広間を使っているので席の移動などは余裕があった。
座布団を3枚重ねた上に座らされた薫はどう答えたモノかと思案を巡らせる。
「さてさて、久我峰くんのターゲットは誰だったかにゃぁ~」
やいややいやと仲間たちが盛り上がる。
飲み会を始めてすぐに美味しそうな肴が出てきたのだ、皆盛り上がっていくぜ。
薫にはこの盛り上がりを覚めさせないようにうまく話をしないとダメなのだ。
さてどうする。そう悩む薫だったが、そこにビールジョッキでゴクゴクビールを煽るソラが近づいて来た。
「生お替り!」
そう言って蒼は薫の足の間にポスンっと座って、
「私達お付き合い始めましたぁ♡」
と一気にぶっちゃけたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます