第15話

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ゲームからログアウトしたクーガ、こと、久我峰薫は叫びをあげた。

「どうしたんだい薫君」

 同じくログアウトしたソラ、こと、月見里蒼が訊ねる。

「終電過ぎてる~~~~~~~~~。なんで、ちゃんとアラームセットしておいたのに」

「それなら私が解除しておいた」

「どうやって!」

「勤怠管理の権限を使ってちょちょいとね」

 ゲームにログインする前のサンタコスでお尻をフリフリしながら蒼が告げる。

「越権行為、どうするんですか帰れませんよ。外雪降ってますよ」

「ホントだ。ホワイトクリスマスだね。――――って言うか吹雪いてるね」

「こんな中歩いてでも帰れないですよ」

「帰る必要ないじゃん」

「このクリスマスイブの夜にホテルに空き室があるとでも」

「いやぁ、まずないだろうね。多分みんな熱い夜を過ごしているだろう」

「どうするんですか」

「泊ればいいんだよ。ここに」

「ここって、会社にですか?」

「そうそう」

「でもそんな設備――――

「こ~~~んなこともあろうかと、用意してます」

「社長、図ったな社長」

「へへへ、ホントは私から告白するつもりだったんだけどね」

「あっ、……そうか俺社長に告白して」

「こら、忘れんな」

「すみません」

「それで、クリスマスプレゼントの本命はワ・タ・シなんだけど――――なし、今の無し。何オバサンが恥ずかしいこと言ってるのよ」

 ガシッ。

 照れて手をばたつかせながら顔を背ける蒼の手を掴んで薫は告げた。

「それ、ください」

「……いいの。私の初めてもらってくれるの?」

「絶対に欲しいです」

「~~~~~~。薫くん、顏真っ赤だよ」

「しゃちょ――――ソラだって真っ赤です」

「そりゃそうなるよ」

 顔を真っ赤にして俯く蒼を薫は抱き上げる。

「わっ」

 それはゲーム内の肩に担ぐのとは違う、お姫様抱っこだった。

 2人はしばし至近距離になった顔を見つめ合わせながら、どちらともなく口づけをした。

 最初は遠慮がちに小鳥がついばむように。

 次第に深く、互いに口をむさぼるように激しく舌を絡ませ合うように唾液を交換し始める。


 くちゅ、ちゅぶ、ちゅうちゅう、じゅるるるる。

 

 しばしば互いの唇と舌を堪能しあった2人は顔を話して互いに見つめ合う。


「薫くん、もっと。もっと、続き……して」

「ならベットに行きましょう」

「ん♡」

「どこですか?」

「社長室の奥。」

「また職権乱用」

「いいじゃない。ぅん♡」


 2人もまた暑い夜を過ごしたのだった。


 ■■■


 ぴんぽーん。


「ん?」

 聞きなれないチャイムの音で目覚めた薫は目を擦ると、

「っ!」

 目の前に蒼の寝顔があって驚いた。

 そして、昨日のことを鮮明に思い出した。

 小さい蒼の体も、その柔らかさも、そして熱くてきついソコの感触まで。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 ぴんぽーん。

 昨日のことを思い出しては顔を真っ赤にしていた薫だが再度なったチャイムで現実に戻された。

 薫はとりあえず服を着てチャイムに答えた。

「宅配便でース」

 クリスマスの朝からご苦労なことだ。

 そう思ったがもう昼頃だ。

 今日が休日でなかったら他の社員に見られていたかもしれない。

「久我峰薫さん宛のお荷物でーす」

「俺宛?」

 いぶかしがりながらも受け取りを済ませると。

「なになに、なにこれ~」

 ワイシャツ一枚を着ただけの蒼が大きな荷物に興味を示していた。

 薫は蒼の恰好に照れて目をそらしてしまう。

 そこで目に付いたのが、

「ミーゴ?」

 配送もとに記載された名前だった。

「薫く~ん」

 いぶかしんでると蒼の怖い声が聞こえた。

 そっちに目を向けると。

「流石に会社でダッチワイフを受け取るのはどうかと思うよ~」

 荷物の梱包を解いた蒼と、全裸の人形が目に入った。

 人形の頭には赤いハイビスカスのような花飾りがあった。

 

 ミーゴ、それはFCOの開発と運営を行う宇宙人だ。

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