第6話

 ドラゴンとの戦闘は想定していた2人だったので、部屋に入る前に対ドラゴン戦用の装備に変えてはいた。

 そのため、地竜の攻撃で一撃死なんてことは起こりえなかった。が、倒しきることが目的の戦闘ではなく、ドラゴンからNPCを守る戦いと言うのは苦手分野であった。


「くっ、こういうのはアッ君の出番なのに」

「そうですけど、これカップル限定イベントなんですよね。あいつには無理です」

「どっちにしてもアッ君は居ないのよ。私たちで何とかしましょう」

「うっす」


 ということで、こういう少人数での護衛ミッションの攻略法は2つある。

 1つは護衛対象がやられる前にクリア条件を満たしてしまう。

 もう1つは敵を護衛対象に近づけないこと。

 この2つが基本となる。

 今回の場合だが、どうやら指定時間を守り切るのが目的であるため、最初のやり方、敵を倒してしまうというやり方ではクリアできない。

 必然的に二つ目のやり方になる。


「【プロヴォカッツォン】。ヘイ、鬼さんこちら屁の鳴るほうへ」

 お尻ぺんぺーんと、お尻を突き出すクーガのお尻をソラの鞭が叩いていい音を鳴らす。


 ぶうっ!


「うわ、ゲーム内なのに本当におなら出るんだ」

 と、純粋に驚くソラと、かりにも好きな女性の前でおならをしたことに羞恥で顔を真っ赤にするクーガ――――その2人に猛然と襲いかかかる地竜が居た。


 クーガが使ったスキルは自身にタゲを集中させるためのモノであり、これで地竜をおびき寄せてボッツを攻撃させないようにするのだ。


 クーガはHPも防御力も高く、また、リジェネスキルもあるため生存性は高い。

 だが、防御スキルは自身とパートナーのソラを守る効果しかなく、範囲攻撃から他者を守る事には向いていないのであった。

 だから、地竜のターゲティングを自分に集中させてボッツから遠ざけたのだ。


 地竜から爪や突進攻撃が繰り出されるのを時には盾で受け流し、時には回避をして時間を稼ぐ。

 そして、その合間合間にも反撃を入れてダメージが通らないかと試してみるが。

「うーむ、ダメージは通るし、HPからして倒せそうではあるな」

 ソラが対ドラゴン特攻武器で攻撃してみた感想を述べる。

「じゃあ、別に倒してしまっても構わないですよね」

「うん、ダメだな」

「なんで!」

「今の君のセリフのせいで倒したら駄目だって確信した。このまま時間まで引き付けるよ」

「分かりました」

 その後も地竜からは執拗なまでの攻撃が繰り返されたが、クーガたちがやられるようなことはなかった。

「意外と弱い?」

「だから倒させることが罠なんだよ。もうちょっとで答えが出る。それまで油断せずに堪えろ。」

 そう言っていると地竜が大きく口を開けて地面を強くつかんだ。

「ほぅら、ブレスが来るよ。耐えきるんだ」

「サー、イエス、サー」

 構えるクーガの頭にソラが鞭を食らわせてバフをかける。

 2人がきたるドラゴンブレスに備えていると。


「できた!」

 という声と共に地竜が幻の様に消え去った。

「え?」

 と、戸惑いを見せるクーガだったが、

「このタイミングでかい」

 と、ソラの方は余裕の顔でため息をついていた。

「え、どういうことですか」

「すぐに分かるさ」

 そう言ってる2人の下にボッツが駆け寄って来る。


「ありがとうございます。お2人のおかげで無事に送還魔法が完成しました」

「送還、あぁドラゴンを送り返したのか」

「そう言う事」

「それで、これ良かったらお礼に受け取ってください」

 そう言て旗状のアイテムを差し出してきた。

「倒してしまってはこれが手に入らなかっただろう」

 そう言いながらソラがウインクをしたのだった。

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