第5話
「ここだここ」
「ここにボッツが居るんですか」
図書館の迷路を探索し、何体かの本型エネミーを倒して到達した場所は、シックな装飾が施されたちょっと大きめな扉のある部屋だった。
「ああ、私の考察ではここだろう。そして、たぶんドラゴンがボスに出てくるぞ」
「ソラ社長の予想って大体当たるから怖いですよね」
「でも、私としては予想を裏切ってくる展開の方が好きかな」
「俺は王道系が好きなんですけど」
「じゃあ、ちょっと賭けようじゃないか」
「何をです」
「ここが私の予想どうりかどうかで、勝った方が負けた方にラーメンでもおごってもらうってのはどうだい」
「いいですね」
「では、私は予想を裏切られる方で」
「じゃあボ俺は社長の予想が当たるほうに賭けますね」
「それじゃぁ行ってみよう」
扉を開けて部屋の中に入ってみると、そこは暗くて広い円形の部屋だった。
壁にはぎっしりと本の詰まった本棚が並び部屋の中央には閲覧用の机が整然と並んでいた。
「……ハズレ、ですかね」
クーガがそうつぶやいたが、
「……いや」
カッ!
と、部屋の奥が光ると同時に、小柄なローブを着たNPCが駆け寄って来た。
「助けてくださ~い。召喚が失敗して制御できませ~ん」
「チッ。どうやら私の予想どうりだな」
叫びを聞いて舌打ちしたソラは残念そうであり。
「ラーメンごちになりやす」
と、クーガは嬉しそうに返すのだった。
部屋の奥に光った魔法陣の中から、机や椅子を薙ぎ倒して巨大な獣が現れた。
全身を緑の鱗に覆われており、4本の太い足には太い爪が生えており掴んだ地面を砕く。
頭部には大きな口が開き牙をのぞかせ、こめかみ辺りからねじれた角が生えている。
太い尻尾も不機嫌そうに上下に振られて地面をたたいている。
その背中には翼こそないが、まごう事なきドラゴンであった。
「地竜ですね」
「まぁ、地下だから飛ぶやつじゃないのは予想していた通りだな」
「とはいえ、中ボスならばさっきのハーブたちと同じくらいの強さじゃないですか」
「油断しないの」
クーガの楽観にソラがたしなめる。
その際に鞭で頭をペシーン!と叩くのを忘れない。
「さっきは連戦だったでしょ。今回は単体だから3匹分の強さかもしれないじゃない」
「確かに」
「それに、地竜って飛べないからって他のドラゴンより格下に見られがちだけど、ドラゴンなのは確かなのよ」
「了解しました」
「すみません。どこのどなたか分かりませんが、あのドラゴンはオイラが責任をもって送還します。だからそれまでオイラを守ってください」
多分ボッツだろう小柄なローブ姿のNPCのセリフに、クーガとソラの顔が引きつる。
「これ倒せない奴ですか」
「どうやら一定時間護衛するミッションみたいだね」
「俺こういうの苦手」
「私もだよ」
ゲーム内だというのに冷や汗が流れる2人に、大きな口を開けて地竜が威嚇をしてきた。
戦闘開始である。
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