第3話
クーガ、こと、久我峰薫が
「たのしそうだねぇ」
「そりゃあ楽しいですよ。ソラ社長と付き合えるんですから、嬉しくないはずがあろうか。いやない」
「なぜに反語を使った」
「ノリです」
「――――まったくもう」
そうつぶやきながら鞭でぺしぺしとクーガの頭を叩いてるソラも、若干浮かれ気味であった。
「はい、メモにあったハーブを取って来たわよ」
お城の庭から城内の厨房に戻ってきた2人はさっそく忙しく働いているボットに、取ってきたハーブを渡したのだった。
「ああああぁぁぁぁ、ありがとうございます。オイラじゃハーブの採取は命がけになるので、なかなか料理が完成しなかったんです」
「おい、こいつサラリと危険を他人に押し付けやがったってことか」
「社長、落ち着いて。これはゲームですよ。よくある事じゃないですか」
イラッときたソラが、なだめるクーガの頭を鞭で叩く。
もはやお約束の光景である。
「さぁ、仕上げに入りますから少し待っていてください」
そう言ってボットはテキパキという効果音と共に動き回る。
その様子をしばし眺めながら2人で待っている。
と、
「ねぇ、薫くん」
ソラがクーガのリアルの名前を呼んできた。
「どうしました社長」
「むっ、まずはその呼び方変えようか」
「え、呼び方?」
「社長って呼ぶのは仕事中なら仕方ないけど、勤務時間外なら呼び方変えてよ。私達付き合うんでしょ」
「そ、そうですよね。って、そう言っても今は残業中ですから仕事中じゃないですか」
「タイムカードを押さなければ残業じゃなくなるよ」
「ブラック!ダメですよ。監査厳しいんですから」
「残業上等でゲームやってちゃんと給料もらえるとか、超優良企業だよね。ウチ」
「でもチェックは厳しいですよ。まだ実績に繋がらない分野ですし、危ないことはやめましょう」
「うーい。でも、やっぱ社長って呼ばれるよりは名前で呼ばれたいなぁ」
と、甘えてくるソラが可愛くないわけがない。
「じゃぁ一度だけ、ソ……ソラ」
「うーむ、なんかプレイヤーネームで呼ばれている気がする」
「いや、そもそも本名でしょう。プレイヤーネーム」
「そこをもっと本名感出してみてよ」
「う、う~ん。……
「惜しい、呼び捨てで、ワンモアプリーズ」
「蒼」
「もう一回」
「蒼。」
「いいねイイよ~」
照れながらもソラの名前を呼んだクーガはゲーム内だというのに、顔が真っ赤だった。
「あのお客さん、イチャついているところ悪いですけど、料理できましたよ」
「わっ!」
「そうだった」
「それでこれ、手伝ってくれたお礼です」
そう言って、ボットは料理アイテムを渡してくれる。
【激辛ホットスープ・聖夜】という名前の料理、効果は戦闘中の凍結を防ぐものだ。
「お、これはボス攻略のキーアイテムかな」
「ありがたくいただいておきましょう」
「それでお客様は何の用で来たんだ」
「あぁ、それはこれをアナタに渡すためよ」
そう言ってソラがボットにプレゼントを渡した。
「え?これって、サンタさんのプレゼント」
「そう。いい子にしてたご褒美だって」
「あ、ありがとうございます」
「それで他のお弟子さんにもプレゼントを渡しに行かなきゃならないんだけど、場所分かる」
「それでしたら――――――。」
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