第15話

 最初の弟子がいるという塔にやって来たクーガたち。

 塔の中を覗き込んでみれば、


「これは煮込みにして、あぁ、焼き物が焦げちゃう。にゃぁぁぁ、玉ねぎが目に染みる~~~~~」


 中は情報通り、厨房になっていた。

 そこでは緑色のローブを着た小柄な人影がせわしなく働いていた。

 多分あれがボットなのだろう。

 2人は注意深く厨房の中を確認して、エネミーがいないことが分かってから中に入っていった。


「お前が魔女の弟子のボットか」

 ソラがクーガの肩の上から声をかける。

 すると忙しそうにしていたローブの人が動きを止めてクーガたちに向き直る。

「そうだぞ。オイラがボットだぞ」

 そう答えたボットは例えるなら白雪姫に出てくる7人の小人の様なキャラだった。

「お前ら何者だ。見かけない奴らだな。おっと、そんなことより料理を作らないと」

 と、またせわしなく動き始めてしまった。

「おい、お前に渡したいものがあるんだ」

「ああ、忙しい、忙しい」

「おい話を聞かんか」

「ああ、忙しい、忙しい」

「……やーい、お前の母ちゃんっでべそ」

「ああ、忙しい、忙しい」

 とまぁ、こんな感じで話にならない。

「こういう場合ってやっぱり」

「あれですよね」


 ポン。という効果音と共にクーガたちの前に『手伝いましょうか?』というセリフが掛かれたウインドウが立ち上がった。

「やっぱりか」

「まあ、RPGですからね」

「仕方ないか」

「そっれじゃあ、「手伝いましょうか?」」

 クーガがそう言うと、ピロン、という効果音が鳴った。

 FCOではこういうコマンドは口頭でも選択できる。

 と言うか、そっちの方がリアルだし、便利なのでみんなそっちを使っている。


「なんだ、お前ら手伝ってくれるのか?」

 ようやく話が進んだ。

 こうやって何かイベントをこなさないとプレゼントは渡せないようだ。

「それなら料理に使うハーブが足りないんだ。そこにメモがあるから、庭に行って印のある場所のハーブを取って来てくれ」

「お安い御用だ」

 クーガはそう言ってテーブルにあるメモを手に取る。

「取って来るハーブは3つか」


 2人は庭に出てハーブを探す。

 その道中何体か植物型エネミーを倒す。

「えーと、メモだとこの先に――――」

 生垣の中を進んだ先には巨大な植物が鎮座していた。

 紫色の葉っぱに白い小さな花が咲いた植物は生垣に問って作られた広場の真ん中に陣取っている。

「取って来るハーブってこれのことか」

「たぶん」

「そしてこういうのは倒さないと手に入らないという事なんだろうね」

「HPバーがありますしそう言うことでしょうね」

 そう言う2人の前で巨大な植物が地響きと共に動いて、蔦を持ち上げていった。

 エネミーのHPバーの上には【キラーミント】という文字が見て取れる。

「来るぞ油断するなよ」

 ソラは鞭をしならせて構える。

「指揮は任せますよ。ソラ社長」

 クーガもそう返しながら、盾とフランキスカを構えて戦闘態勢に入る。


 ズウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥン。


 という効果音と共に中ボス戦に入った。

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