第14話

「さて、最初の弟子はあの煙の出ている塔の調理場にいるわけだけど」

「道中敵がいるだろうね」

「これって見つからないように行った方がいいのかしら」

「ミッション告知もないし大丈夫じゃないかな」

「それじゃあどんどん行きましょう」

 そう言ってソラはスパーンスパーンと鞭でクーガの頭をブッ叩いて行先を示す。

 向かう先には庭を抜けていく道とお城の中を進む道があるようだ。

「ここはお城の中から行きましょう」

「了解」

 クーガは人1人を乗っけているのに、軽快な足取りで歩き始めた。


 ボシュゥゥゥン。

と、エネミー撃破のエフィクトが晴れる。

 ちなみに、このFCOではエネミーの撃破時のエフィクトが何種類も用意されていて、属性やエネミーの種類によって異なる。

 この氷の城に来るまでも何タイプかのエネミーを倒してきたが、スケルトン系なら骨が散らばる、鉱石系なら割れる、動物系なら出血などと、攻撃方法なども加えればかなりの数の種類があった。

 これもFCOが外(惑星)資系の運営だからこそできるこだわりなのだろう。

 戦争のことを抜きにしてもこの臨場感は多くのゲーマーを引き付けている。


 その中でもクーガとソラは古参プレイヤーである。

 しかも仕事がゲームの攻略でもあるためプレイ時間はおのずと増えていく。

 そうすればレベルも相当に高くなるものだが、

「そこそこ硬いですね」

「星いくつ程度?」

「星5つってところでしょうかね」

 クーガは今しがた倒したエネミーの手ごたえを確認してそう答えた。

「2人1組のカップル限定のイベントで星5つってことは結構な難易度ね」

「その分敵の数は少ないようですが」


 クーガたちの言う星とはFCO内でのランク分けに使われる総称だ。

 武器やアイテム、エネミーからダンジョンまで、ランクが設定されている。

 別名、レアリティとも言われるこれだが、ダンジョンやクエストなどでは、この星が難易度を左右する。

 挑戦するプレイヤーの平均レベルとパーティーの人数で出てくるエネミーのレベルやドロップするアイテムのレアリティなどが変わる。

 星が多いほど、挑戦するプレイヤーのレベルに対してのバランスがとられるのである。

 そして、現在確認されている最高の星は7つである。

 星6つでいくつかの攻略情報は出ているが、7つはいまだ攻略されたことが無いほどである。

 であるならば、星5つは初見ダンジョンとしては最高難易度になるだろう。


「いいねぇ。がぜん燃えて来た」

 たぎるソラはテンションが行動に出るタイプで、手のひらでクーガの頭をパンパンと叩いている。

「星5つ分の報酬とかどんなものだろうね。ソラ、ワクワクっすぞ」

「ソラ社長、テンション上げるのはいいですけどそれだけボスも強くなるはずです」

「分かっているわよ。だからこうしてギミックを達成しようとしてるのでしょ」

「分かってるならいいですけど――――」

「だからクーガくんにワタシの足になってもらって、先走らないようにしてるんじゃないの」

「はいはい、そうでしたね。では次行きますよ」

「発車、オーライ」

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