第13話

 魔女の城は氷でできた城のイメージの通り、内部は気温が低い――――と思ったら、意外と暖かかった。


「さて、目標は魔女退治でいいでしょうが、その為にやるのが」

「まずは弟子を探してプレゼントを渡すことですね」

 クーガとソラはセオリーとしてそう結論付けた。

「それで、その弟子ってどこにいると思う?」

「うーん、お城の形状からバラけている気がしますね」

「弟子の場所はノーヒントなのかしら」

「それは分かりません。とりあえず進んでみてヒントがないか探しましょう」


 2人は門の上から屋内に入り探索を進める。

 抜き足差し足で歩くクーガ。

 そしてその左肩に座るソラ。

 これが2人の探索時の基本スタイルだ。

 ぶっちゃけソラは猪突猛進なところがあり隠密行動が苦手なのである。

 対して、クーガは見た目に似合わず繊細で細かな作業が得意だったりする。

 今回もうまくモンスターを躱しながら探索を進める。


「別に全部蹴散らしていけばいいんじゃないのかしら」

「それじゃぁ、情報を逃すかもしれません。」

「モブのザコにどんな情報が――――」

「しっ、話し声が聞こえます」


 曲がり角の向こうからモンスターの反応がある。

 クーガが慎重に曲がり角に来るとその話声がハッキリと聞こえて来た。


「おい、聞いたかい」

「何をだい」

「今日の料理当番はボットさんらしいっゼ」

「はぁ~~、それはまたご愁傷さまだな」

「あの人だって魔女様の弟子なのに料理ばかりさせられて大変だよな」

「でもボットさんお料理の方が他の人よりうまいから助かるわ」

「言えてる。おれ等じゃただのスープだもんな」

「ははは、違いねぇ」

「おっと、そろそろ交代の時間だおれはいくぜ」

「おう行ってこい」


 モンスターの会話が終わって1匹がこちらに近づいてくる。

 曲がり角に差し掛かる瞬間。


 ガッ!


 死角から飛び出した太い腕が歩いていたモンスターの首を掴んで死角に引きずり込んだ。


「おっと、声を出すなよ。へし折ちまうかも知れない」

 腕はクーガのもので、モンスターの首を羽交い絞めにしていた。

「グゲッ、侵入者か。いったいどこから」

「そんなテンプレはいい。そんなことより今話していた魔女の弟子の場所は何処だ」

「何のことだ」


 ピッッシャァァァン!


「とぼけるんじゃありません。アナタが言っていたボットの場所を吐けと言っているんです」

 クーガの肩に乗っていたソラがモンスターの顔を鞭で打つ。

「グッギギギ、キサマらボットさんに何をするつもりだ」

「アンタが知る必要はないわ」

 また一振り鞭が振るわれる。

「ギャァァァ、イタイ、イタイ、やめてくれ」

「ならば聞かれたことに素直に答えなさい」

 ソラには【脅迫】というスキルがある。

 これはモンスターに小ダメージを与えて情報やアイテムを手に入れるためのモノだ。

「さぁさぁ、サッサとお吐きなさい」

「イタイ、イタイ、言う。言うからやめて。―――――ボットさんなら、あの煙が上がっている塔の中の調理場に居ます。だから、言ったから助けて」

「ふふ、これであなたは用済みですね。」

 絶望で顔を青くするモンスター。

 そして楽しげに笑うソラ。


 バシュ―――――ウン。


 モンスターの撃破エフィクトと共に経験値を得た2人。

 クーガは申し訳なさそうにドロップ品を集める。

「さぁ、どんどん行くわよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る