第11話
一夜が明けた。
いや、体感では夜が明けたと感じただけで、窓の外ではいまだ月が天頂に輝いていた。
「さて、気分はいいかね」
ともに休息をとったソラからそう聞かれてクーガは、
「最高です」
と答えた。
だって、社長のような美少女と一夜を共にしたのだ。
たとえゲームの中だとしてもそれは至福だった。
まぁ、ゲームの中では朝チュンでお着換えイベントは期待しすぎなのは分かっているが、狙ってたクーガは見られなかったことにちょっと落胆した。
とりあえず2人は朝食を済ませる。
「おっ、これ旨いっすねえ」
「ふむ、そう言えばFCO内の調味料は地球外のモノが再現されている。何て、都市伝説があるが」
「なるほど。これはもしかすると地球外のグルメかもしれないと」
「それ以前に君は地球のグルメを網羅したのかね」
「いえ、これと言って」
「なら今度一緒に食事に行こう。おすすめのカレー屋があるんだ」
ドキリとした。
「は、はい」
デートか、デートのお誘いか。
クーガはテンションが上がるのを実感した。
「サチたちも誘ってみんなで行こう」
「ですよおねぇ~」
肩を落とすクーガに社長のソラは顔を覗き込んで尋ねてくる。
「うふふ、2人きっりが良かったのかな?」
「……言わせないでください。」
「ならば頑張って働くことだな」
ソラはフォークに刺したオカズをクーガの目の前に差し出す。
「あっ、あ~~~~~~~~~ん」
ヒョイ、パク!
クーガの前に差し出されたオカズは残念ながらクーガの口には入らずソラの口に入ってしまった。
「くふふふ、ご褒美が欲しければ働けと言っているだろう」
「……分かりました
「くふふふ」
その後準備ができた2人はサンタさん(仮)に頼んで魔女の居る城まで連れて行ってもらうことにした。
「さぁ、トナカイたちよ仕事だぞ。」
サンタさん(仮)がそう声を上げるとソリを引いたグラマラスな美女たちが現れた。
「……マジであれでソリを引くのか。」
「……宇宙人からしたら人間もトナカイも大差ないんじゃないですか。」
2人がドン引きしていると、
「さぁさぁ、お二方、どうぞソリにお乗りください。」
と勧められたので、ソリの後部座席、もとい、プレゼントを贈荷台に乗り込む。
そしてサンタさん(仮)がソリに乗って手綱を握れば、
「んん、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
と色っぽく体をくねらせてトナカイたちが声を上げ始めた。
見ればなんだか周りがピンクやオレンジのパステルカラーのキラキラした空間になって、美女たちの姿が光に包まれていく。
分かりやすく言うと魔法少女の変身シーンだ。
キラキラキラ~~~~~。
ムキ!モサァ!
ムキムキ!モササァ!
ビキビキ、ズシッン!
「ブルルルルルルル、フーーーーーーーーーーー!」
光が弾けるたびにムキムキの筋肉と毛深さがあらわになって、グラマラスな水着美女たちが立派な角を生やしたトナカイに変身したのだった。
「……さっきまで美女だったのに何で角生えたトナカイに成っちゃうんでしょうね。」
「なんだ知らんのか。トナカイは鹿科で唯一メスも角が生えるんだよ。」
「へぇ~。そうなんだぁ~。びっくり~。って、そう言う話じゃないし。」
「そうだね、クーガくんは半裸の美女に轡をかませて、雪の中四つん這いにして手綱を握るのを期待してたんだもんね。」
「すみません。誤解させたのは謝りますから、その汚物を見るような目で蔑まないでください。」
「さてそれでは出発じゃ。」
サンタさん(仮)が手綱を振ってソリが走りだして、そして宙を走りだす。
「おおう、ホントに飛んだぜ。」
「ははは、これもゲームの中なんだから飛ぶでしょ。」
「それは分かってますよ社長、なんかこういうのって子供の頃にあこがれたから。」
「まぁ分かるかなぁ。わたしもあこがれたくちだし。それよりも見てみて。」
「おお~う、空が近い。月に手が届いそうだ。」
「なんかいいもんね。こういうのも。」
2人はしばし時間を忘れて空の散歩を楽しんだのだった。
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