第9話
ソラが魔女退治のクエストの開始を選択すると先ほどの本に新たなページが現れた。
そのページには今いるダンジョンのマップの一部と隠し通路の場所が記されていたので、2人はその隠し通路に潜入してみることにした。
「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」
「ダンジョンに入る前から雪国だったでしょうが」
「言ってみたかっただけです」
クーガが名作の一文を口にしているのは、洞窟型のダンジョンの穴から出てきたら雪の女王がいそうなお城が見える屋外エリアに出たからだ。
「クーガくん、冗談もいいけどここ隔絶エリアになっているよ」
「てことは、やっぱり期間限定イベントでアタリっぽいですね」
「時間倍率が通常の10倍になってる」
ソラの言う時間倍率と言うのはFCOゲーム内の時間についてである。
FCO内部ではプレイヤーの体感時間が加速されており、通常のプレイエリアでは現実時間の60倍の時間加速がされている。
つまり、現実での一分間のプレイも、ゲーム内では1時間分のプレイになるのである。
しかし、イベントや特殊なエリアではこの時間加速の倍率が変わることがある。
今回2人が入ったエリアは通常の10倍。
これはFCO内でも最高の倍率である。
現実だと1秒でもゲーム内では600秒、つまり10分間である。
大したことのない倍率に見えるだろうが現実の1時間は600時間、25日分になるのだからすごいだろう。
「これはなかなかのボリュームになりそうですね」
「その分手に入るものも期待できるってものよ」
意気込むソラをいつものように肩に乗せているクーガはとりあえず見えているお城へと向かうことにした。
「やっぱり一番乗りなのか他のプレイヤーは見当たりませんね」
「うーん、ここでは外とのチャットはやっぱりできないみたいね」
「なら俺らがしっかり探索しておかないと日の目を見なくなるアイテムもあるかもしれないのか」
「来年もFCOが続いていたら復刻されるかもよ」
「そのためには半年後の戦争に勝つぐらいしないといけませんがね」
「ならがんばってこのクエストでいいモノ手に入れるわよ」
ソラの掛け声にオォー!と手を上げて答えるクーガはソラを肩に乗せてズンズンと雪の中を歩いて行った。
途中で何体かの動物系モンスターを倒しながら城のそばまでやってきた2人だったが。
「これはそのまま中に入ることはできないみたいですね」
クーガはお城の周りを見渡してそうつぶやいた。
お城の正門は跳ね橋になっていてお城の周りが深い堀になっているのだが、跳ね橋は上がったままで堀を超えることができない。
「さて、お城に入るためのギミックがあるはずだけどクーガは何があると思う?」
「城に出入りする者がいるからそれに紛れる」
「無いわね。こんな辺境の魔女が住む城に出入りする奴がいるかしら」
「外から跳ね橋を下ろす装置がある」
「王道ね」
「どこかに地下の隠し通路がある」
「ソレもアリね」
「もしくはクエスト内の特殊イベントがあって特別な侵入ルートができる」
「それね。それが一番面白いわ」
「自分で言っておいてなんですが、そんな都合よくイベントがありますかね」
「FCOの運営は遊び心があふれているじゃない。こういう時はそういうイベントを用意して侵入ルートによってストーリーや入手アイテムが変わるギミックを用意しているわ。私の勘がそう言っている」
「なるほど、ならばこの辺りの探索ですかね」
2人はお城から離れて周りの雪原を探索していった。
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