第8話
「これはいいものなのか?」
骸骨戦士の群れを一掃したクーガはモンスターハウスの奥にある報酬と思われる宝箱を開けて中を覗き込んだ。
「なんかイベント進行用のキーアイテムぽいな。」
「どれどれ。」
骸骨戦士たちのドロップしたアイテムを回収していたソラにソレを見せる。
アイテムは一目で書物と分かるものだが、スキル習得用のものとは趣の異なるデザインだった。
その書物は質素な装丁なのだが血のりが付いて、例えるなら死人の遺品って言えるような本だった。
「ふむ、呪いの類はない様だな。」
ポンポンと本を指で叩いてみるソラ。
ソラは「女主人」として【鑑定】や【探知】系統のスキルをいくつか習得している。
だから新しいアイテムはソラが【鑑定】役である。
ポンポンと叩くたびにスキルの発動を表すエフィクトが光る。
「とりあえず無害なのは確かだ。イベント関係だと思うから中を見てみよう。」
ここで慎重にするのは、かつてクーガが拾った本を不用意に開いて本に丸呑みされたことがあったからだ。
その本の中は隠しダンジョンになっていてかなりの収穫があったのだが、準備無しでの攻略だったもので疲れに疲れた記憶があるのである。
「え~と、なになに『この手記が誰かの手に渡っていれば私は志半ばで倒れたということなのだろう。私はとある魔女を退治するために国王の命を受けたものである。私の国には聖なる夜に結ばれた男女には祝福があると言われていた。そして次の聖夜には姫様が隣国に王子と婚姻されることになっている。その姫を妬んだ魔女が呪いをかけて婚姻を妨害してきた。王は私を含めた国の勇者を集めて魔女の討伐をご命じになった。しかし魔女は凶悪で非道な魔法を使う。私達の誰か一人でも魔女を倒せたらいいのだが―――もしそれがかなわなければ、この手記を手にした方が腕に覚えがあれば我らの敵を討ってほしい。もしくは故郷の「ノーボリベップ」に住む幼馴染にこの手記を形見として届けてほしい。生きて帰れたら結婚する約束をしていたのだ。見知らぬだれかよ頼みます。』だって」
「とりあえず、こいつは絶対死んでるよな」
「でしょうね」
「で、こいつでイベントが始まんのか?」
「みたいよ。ほら、魔女を倒しに行くか形見を届けるかの選択肢が出た」
「形見を焼き捨てるって選択肢はないのか」
「モテない男のひがみは分からなくもないけど、わたしなら形見を届けたうえで慰めながら幼馴染の娘を寝取っちゃうけどね」
「……ソラさん、マジ……ぱねぇ」
「さて」と一息ついて鞭でクーガのふとももを打つソラ。
「ここからはやっぱり魔女退治かしらね」
「ッ~~~~、確かその本には聖なる夜って書いてあったんだからこれはクリスマス限定イベントでしょうし、やるっきゃないでしょうね」
「そう。限定イベントのボスならドロップアイテムも期待できるしね。加えてクリア後に聖夜の祝福が得られる可能性もある」
「何が出るか分からないからこそのワクワク感がありますよね」
「ふふん、限定でしかも期間が短いとなると独占できる。運営ががんばっていたら唯一無二のユニークアイテムになるかもしれない」
「ならばさっそく攻略しましょうか」
「サクッと魔女を倒して幼馴染もいただくよ」
「両方クリアするつもりかよ。節操ねえなぁ」
「付き合ってくれるよね」
「もちろんお供します」
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