第6話

 ソラはフリルのついた赤いドレスに頑丈そうな革のブーツを履いている。

 そしてソラは現実では長い黒髪をFCO内では銀髪にしており、頭部装備の赤い宝石が目立つバレッタで髪をサイドテールにまとめている。

 手には白い手袋をして黒革の乗馬鞭を装備している。

 そんな格好でいつもクーガの肩の上に座っている姿はFCO内ではかなり有名だ。


「さーてクーガくん準備はできたかな」

 スッパーン!

 スッパーン!

 と手にした鞭でクーガの頭をはたきながらアイテムなどの準備を終えたソラがマップを開く。

「今回は最初の予定どうりのダンジョンでよかったのですか」

「いいじゃん。クリスマスイベントを初見ダンジョンで挑戦とか、イベント期間は明日25日の23:59まであるからいっぺん行ってみてきつかったら明日他のとこに行こう」

 ソラは強気な発言をしているが、この2人のコンビプレイにはソレに納得がいくほどの能力があるのである。

 だからクーガも文句はなく自分が見つけた未攻略のダンジョンに行くことに賛成した。


「それじゃぁわたし達の残業デートを始めましょう」


 途端に別の意味で不安になるクーガだった。


■■■


 ノーボリベッツの街は北にあるだけあって積雪量が豊富だった。

「社長、寒くないですか?」

「むしろ君の方が寒くないかい」

 北国をイメージした街中では半裸の男がどれほど浮いているものか分かるだろう。

 FCOでは体感温度も設定されている。

「いえ、筋肉が温かいです」

「その返しは流石に引くぞ」

 しばし2人は無言で街を歩く。

 そこでクーガが口を開いた。

「社長はクリスマスに予定なんかは無いんですか」

「いやないな。あったら君と2人でゲームなんかしてないさ」

「ですよねぇ」

 肩を落とすクーガ。

「そう言う君はクリスマスの予定はないのかい」

「いえ、ありませんけど」

「そいつは良かった」

 ドキッ。

 肩に乗っかる社長セリフに胸の鼓動が伝わるかと思った。

「で……、でしたら。よかったら自分と――――」

「明日の夜に社員を集めて忘年会でもしようと思ていたんだ。君も参加でいいよね。」

「……………喜んで~~~~~~~~~。」

「それでは今日は2人きりで思いっきり楽しもうじゃないか」

「……ハイ」

「よし発進だ。クーガ部長」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 雪をかき分けて、肩に少女を乗せた巨漢が街を走りだした。

 向かうはダンジョン。

 今だ誰も存在を知らない処女ダンジョンである。

 ここで手に入れるものは一体何なのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る