第5話

「おや、突発イベントの通知だ。なになに―――」

 FCOでは事前告知の無い突発イベントなどが豊富なのがウリでもある。

 今回もそれで今から短期間のイベントが始まる告知が来たので、ソラが読んでみた。

「「メリークリスマス、皆さん寂しい夜をお過ごしですか?」」

「この運営喧嘩売ってんのか」

「喧嘩どころか戦争吹っ掛けてきてるんだけどね。で、「そんな皆さんの為にクリスマスイベントを開催します。これよりダンジョンに挑む方々は2人1組のカップルでパーティーを組まれてからダンジョンに挑みください。たくさんのギミックを用意しています。限定アイテムやスキルの獲得が可能ですのでふるってご参加ください。なお、カップルの組み合わせに性別は関係ありませんwww.」だって」

「同性同士でもいいとかあおって来るなぁ。てかそれでもソロプレイぼっちなヤツに厳しいイベントとか―――鬼だな」

「運営は宇宙人だけどね。でもちょうどいいじゃん。今日はわたし達2人で行くって社員のみんなにメッセージ入れとくね」

 クーガたちは会社から残業でゲームプレイをしているが、実は帰宅したほかの社員も帰宅後にFCOをプレイする者もいる。

 各自の判断でのプレイでありいつもみんながいるわけでもないが、何人かはクリスマスイブにプレイしに来るものに心当たりがあるので合流するつもりだった。

 だが、この突発イベントの発生でクーガはソラとの2人っきりでプレイをすることが決まった。

 みんなの意見を聞いていないがこのイベントならクーガとソラのコンビには誰も文句はないだろう。

 そもそもフラワーガーデンは残業代が出ない。

 なのに残業するクーガとそれに付き合うソラ、2人の仲については他の社員の知るところであるのでオサッシをするだろう。


 なんてたってクーガのメインジョブは「剣従士サーバント」というレアジョブである。

 FCOにはサブジョブがあるが、その中で一種の状態異常扱いの「奴隷スレイブ」というペナルティまみれの状態を進化させて獲得したメインジョブであった。

 FCOのアカウントは生体認証のため誰も裏アカが取れないのでそんな縛りプレイをするバカがいなかったのである。

 べつにクーガがバカだったわけでは無いのだが手に入ってしまったのだからせっかくだしと使ってみた。

 「剣従士」のジョブでは高い耐久性とユニークスキルが豊富なのが特徴である。

 特にパッシブスキルが優秀でスキルの発動条件が満たされると優れた戦闘力を発揮できる。

 その真価はパートナーがいてこそなのだが、そのパートナーがソラだ。

 2人がパートナーとして全社員公認なのはクーガが「剣従士」なのに対してソラのジョブが「女主人ミストレス」だからだ。

 ソラが「女主人」だからこそクーガは「剣従士」のジョブを獲得できたと言えるのだが。

 しかし、ソラが「女主人」のジョブを獲得した経緯は彼女が公開していないため不明である。

 つまり、クーガとソラの珍奇な組み合わせは今のところFCO内には2人だけだった。

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