Chapter2 覚悟&錯誤
――そして土曜日の朝。
配達が来たことを知らせるチャイムが家に鳴り響いた。
はぁ。何もしないまま逃げるという選択肢は完璧に消え失せたじゃないか……
あのスマホで見た恥ずかしい恰好を自分が着ている想像をすると……あまりに
寝不足のひどい顔のまま荷物の受け取りをしたので、配達のお兄さんも心配そうな表情をするほどだった。
荷物を家族に見つからないように自分の部屋に運び終えると、眠い目をこすりながら包装を開封していく。
おそらくネット上の配達記録で、俺の家にブツが来ていることは今頃あいつらもきっと把握しているだろう。
さっそく試着しながらそんなことを考えていると、丁度メッセージアプリの
「くっそ。ガチでもう逃げられないじゃないか。しかもコレを着たらちゃんと写真を送れって? おいおい、マジかよ!?」
もうコレを着たんだし、罰ゲームは許してくれよ……そう思いながらも、ついつい姿見の前でポーズをしてみてしまう俺。
とはいっても下は普通のジーンズだし、上はオプションパーツを装着しなければただパーカーを着ているだけのようにも見える。
これなら案外いけるかも?
……まぁ他のパーツも見てみよう。
「なになに? え、耳って動くの? おっ、すげぇ! なんか動きもリアルじゃんか!」
一つ一つ包装から取り出して装着していくうちに、次第に俺は楽しくなってきてしまっていた。
無駄に細かい動きをするカチューシャ型の犬耳に、ブンブンと生き物のように揺れる尻尾、そしてなぜか南京錠付きの首輪に無駄に高級そうな
それらを一通り装着して鏡の前に立つと、そこには「くぅ~ん」と鳴いているような可愛らしいワンコ人間が映っていた。
……そういえば俺の顔は元々、姉や従姉妹に「かわいい系の顔だよね! 女装してみたら!?」と言われるくらいの女顔だし、こういう系統のコスプレは案外イケるのかもしれない。
「……ってなにがイケるんだよ。今回の罰ゲームが終わったら、絶対あの二人に仕返ししてやるからな!」
そんな独り言をブツブツ言いながら出かける準備を終えると、俺は老人夫婦が住む家に向けて出発した。
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