第8話 お断りをお断り

けっきょく大人たちの間でどんなやり取りがあったのかはわからずじまいではあったが、暫定的にロメリアは『第二王子の婚約者』となった。

次姉のリーニャも第一王子の婚約者候補として五歳で初めてお目通りし、決定したのは六歳の時であるから、そんなに異常なことではない。


──のだが。


『これ以上、辺境伯爵家との婚姻なぞ!』

『第一王子とリーニャ姫とのご成婚はもう成立したも同然ではありますが、これ以上のさばらせることは!』

「確かにの姫は聖痕を持たぬ……将来的には聖女を身籠られることはないかもしれませんが、万が一ということもあるかもしれませぬ!』

『伯爵とはいえ、中央政治ではなく辺境を治めるような輩に、未来に権力を得るような禍根を残すことは!』


そう多くの貴族たちが反対した。と聞く。

又聞きでしかない。

なのに、その反対を一蹴したのが、失礼な『プロポーズ』をかました第二王子本人だった。

「えー!!ちちうえ!!!あのおんな!あのおんなをぼくのまえにひれふさせるのです!ぼくのことをしらないといった、あのしつれいなおんな!あいついがいいらないのです!」

あの娘は大聖女として神殿に登殿するからとか、修業期間に入るから会えなくなるからとか、妃殿下教育をつけている暇はないからとか、いろいろ理由を述べて改めて妃殿下候補選びをしようと宥めたのだが──

「ちちうえー!ははうえー!うわぁぁぁぁぁぁ────っ!!!」

最後は泣き落としの力技で、第二王子ヴィヴィニーア殿下は『大人の都合』を『子供の我儘』でねじ伏せたのだった。

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