第7話 今日は赤ちゃん…から今日まで

フェディアン家は子沢山である。


大王国ダーウィンの一伯爵家でありながら『聖女聖誕』という特殊な家系の一族として血を絶やすわけにはいかないのと、八属王国各国の辺境伯爵家としてそれぞれ分家して、その地に平和をもたらす結界を張って治めているためである。

女系家族で初代大聖女が大王国の中央神殿で務めを果たして以来、属王国の大神殿の長を拝命していた。

聖女となる女児は、その誕生時に『聖女の証』といわれる神殿が掲げるせいの形の聖痕がその運命を決める。

だが、その不思議な聖痕はすべての女児に出るわけでもなく、またその濃淡によって第一聖女から順位が決まっていくのだ。

例えばロメリアの生家があるダーウィネット属王国には中央の大神殿の他に辺境に結界用の神殿があるが、その神殿に聖女として上がっているのは、十八歳になった長姉のラディアで、その補佐としてロメリアの七歳上の姉レナが第二聖女を務めている。

そして今年十六歳の次姉のリーニャには聖痕はなく、ダーウィネット属王国第一王子の婚約者だった。


「嫌って言ってもねぇ……」

苦笑して『目に入れても痛くない』どころではないぐらいに溺愛しているルツルカは、幼い妹の頭を撫でる。

上下を女きょうだいに挟まれたルツルカとしては弟が産まれるといいなと思っていたが、末っ子は姉妹の中でも一番に可愛らしい女の子で、しかも大神殿の聖痕を胸の上に抱いていた。

その聖痕を見た瞬間に、たったひとりのロメリアの兄は、大神殿の近衛兵に──近衛兵長になるという夢だけが目標になったのである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る