第5話 未来の聖女様は礼儀知らずが嫌い
見た目は金髪碧眼の将来有望な可愛らしい王子様。
口を開けば遠慮会釈どころか、たぶん礼儀も何も為っていない小暴君。
このまま成長すれば、行く末は凡人になればまともな方。
ロメリアには未来視の聖力はないが、もう十分に予想される尊大さだった。
故にそいつがどんな身分の者であろうと、速攻切り捨てた。
ただそれだけ。
たぶん今まで傅く者たちすべてに「はい、仰せのままに」としか言われてなかったのであろうガキんちょの毀れんばかりの麗しの碧い瞳には、みるみる水ではなく怒気が溜まり──
「ぼっ、ぼくがだれだかしっているのかっ!!」
「しりません」
「ぼっ、ぼくはっ、このくにの!おうさまのおうじなんだぞっ!」
「そうですか」
「だからっ!おまえにきょひけんなんてないんだっ!」
『拒否権』なんて難しい言葉知ってるなんて、まあ賢いこと。
半笑いのロメリアの小さな口から出たのは、謝罪ではなく呆れたような誰何。
「で、あなたはどなた?」
「………ぼっ、ぼくをしらないのかぁぁぁぁ───っ!!!」
「ええ。だから『しらない』とさっきもうしあげました。なのれないならば、『ななし』さんでよろしいですか?」
「ち……ちちうえぇぇぇぇぇ────っ!!!」
突然婿候補として名乗りを上げた王子のそばには、未来の聖女に詔を出そうとしていた王帝もいた。
ふたりの着ている物も顔立ちもかなり似ていたから、よほど目の利かない者以外は親子であると簡単にわかる。
わかった上で、ロメリアは礼儀を守れと言外に伝えたつもりだった。
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