第2話 邪魔者(と書いて『乱入王子』と読む)は排除せよ

パァァッと顔を輝かせたロメリアに注視することなく、ヴィヴィニーア王子はまだ喚いている。

「おい!聞いているのか?!わかったんなら、さっさと出発しろ──っ!!」

「エエエエ────ッ?!!!」

ギョッとしたのはロメリアではなく、周囲の大人たち──『聖女の祝福』を受けるためにわざわざ一週間もかかる田舎から出てきた領主夫婦や、神殿を守る衛兵、王子付きの護衛、そして神官たちが、まるで練習したかのように声を揃えて否定の大絶叫を上げた。

地鳴りでも起こったのかと思わんばかりの大声は神殿のドームに響いて、反響も含めて大騒音である。

おかげで殴り込みもかくやの王子まで、その動きと喚き声をピタリと止めた。

「無理」

耳を塞ぐ大人たちも、金縛りにあったかのような王子も、その軽やかな声をしっかりと聞いた。

「な、何ぃっ?!」

「行くなら私の都合で行きます。貴方の都合で行けというなら、さっさと婚約解消して下さい」

「おっ、おっ、おっ…お前ぇぇぇぇっ!!ぼ、僕を誰だと思って……」

「え?ヴィヴィニーア様でしょ?見ればわかりますよ?」

だから何?とロメリアがコテンと頭を傾げれば、ふわりと法衣のフードが外れて、殴られた衝撃で乱れた金髪がサラリと流れ落ちた。

「え?それとも、貴方はヴィヴィニーア様の姿を借りた、どこかの妖魔?退治していい?」

そう言うなり、ブンッと風を切って宝玉のついた錫杖が振り下ろされ、ピタリと王子の鼻先数ミリの位置で止まる。

一瞬遅れて金色の光が宝玉の内側から弾け、衝撃で王子だけでなく止めに入ってきた大人たちまで吹き飛ばした。

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