聖女の行進

行枝ローザ

第1話 突然の乱入者

「おい!」


「おい!」


「おいっっ!!」


「無視すんな!!!」


ガツッと後頭部を殴られ、昏倒したところでようやく声に気づく。

いつも迷惑だと思っているうちに、声すら存在を『無かったこと』にしてしまっていたらしい。

周りの絶叫や、足を振り上げて蹴りつけようとした人影を宥めている後ろ姿が百二十度ぐらいの角度に傾いているのを見て、ようやく自分が床に倒れていることに気がついた。


その姿は華奢で、白い法衣にかけられた加護のおかげで打撲の衝撃以外は何の怪我もない十五歳の少女──聖女 ロメリア・フェディアン嬢である。


まるで暴れ馬を落ち着かせるかのように穏やかに、決して乱暴には扱われない加害者は、ロメリアの婚約者──同い年のヴィヴィニーア王子であった。


「おいっ!ロメリア!お前、『不死の実』を取って来い!」

「は?」

「僕の犬が死にそうなんだ!さっさと取って来い!!取って来なかったら、婚約は解消だ───!!」

「マジっスかっ?!」

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