第17話:さすがリムお兄ちゃん!

 リムはシャワー室に入ると、シャワーの出を強くして、頭皮を強く揉み洗い、雑に髪を洗って搔き上げ、シャワーを止めて大きく息を吐き、頭を振って髪の水を振り払った。


「あーっ、びっくりした!あのチビで寸胴のプリシラが、女らしくなっていて。俺、映像で記憶を残すタイプだからか、目の裏から、あの姿が離れない。アイツ、女になったのか。いつまでもチビか少女のまんまと思っていたのに。なんか恥ずかしいというか・・・・・・。夕食までこの家にいるのか。気まずいな。俺も外行って来ようかな」


 リムは、妹のようなはとこで幼馴染の成長に戸惑い、父親たちの方に行こうと思ったが使命感が強く、自作のプリシラのテストを添削しなければと思い、シャワーを終えて、プリシラの部屋に平静を保って戻った。


「プリシラ、もう終わったか?」何事もなかったように聞いた。


「もう少しだけど、さすがリムお兄ちゃんね!が作ったテストなんかと違って、とても面白いわ!」


リムは、そう笑顔で言われて、嬉しくて横から覗いてみた。

「おーっ、すごいスラスラ解けてるじゃない。しかも苦手分野を1人で」先程のことは忘れて笑顔になった。


「そうよ。私、本当はバカなんかじゃないんだから。私に合った方法でやれば苦手分野だって100点も取れるんだから」


「まあな。でも、お前、うぬぼれるなよ?これは、お前のことをよく知る俺が一生懸命作ったから、こんなに解けるんだってこと。だからな、お前が本当はバカじゃないかは微妙だぞ」


「そうねえ」プリシラは、リムの言うことを素直に認めたが、一旦気持ちが沈んだ。しかしまた明るい顔になって、

「でも、これ、リムお兄ちゃんが私のために、私に合う方法で、一生懸命作ってくれたんでしょう?それがすごく嬉しいわ」とにっこりとした。


 リムは、はっとして、内心プリシラの言葉に酷く照れ、それを隠すように少々厳しい態度をとった。

「でも、本当に答えが合ってるか?最後までやって。それに、いつもこんなことは出来ないから、自分で自分に合った勉強法を見つけなよな。まさかカンニングじゃないだろ?」


「もうそれはしないわ!」


 とにかく、プリシラは、リムに色々と言われながらも、テストを最後までやり終えた。


「この範囲の内容って、こういうことだったのねって分かったわ。結構面白いじゃない」

「でも添削しなきゃな」と言って、リムが添削すると、8割がた答えが合っていた。一方、プリシラは、そのリムがペンを持つしなやかで器用そうな、しかし頼り甲斐のありそうな手指に見惚れた。


 けれども、リムは、テストを見て首を傾げ、

「うーん、すごいけど、母さんがやってったんじゃないよな?」と、プリシラがこんなに出来るはずがないと、自分の女医の母がしていったのではと半分冗談で訝ったみた。


「そんなことないわよ。これ全部私の字よ。とても楽しくクイズみたいに解けて、内容も分かったわ。追試が出たってもう分かるはず」


「それは良かったけど、お前は独学で自分に合った勉強をした方が良さそうだ。でも、俺がいつも見る訳に行かない。通信制とかはどうなんだ?受験もいらないんじゃない?」


「え~、そんなの友達出来ないし、出来ても毎日会えないし、体

育は夜にやったり、プールはなくてつまんないわ」


「プールはそうだけど、勉強出来るならどこ行ってもいいと思うけどな。お前って何のために学校行ってんだ?遊びに行くんじゃないんだぞ?」


「もう、パパみたいにうるさく言わないでよ。学校行きながらゆっくりだけど私に合うことは何かとか、友達に刺激受けて“これしようかな”って考えたり、私なりに考えてるんだから。友達と遊ぶのも大事じゃない?リムお兄ちゃんこそガールフレンドと遊んでるじゃない」


「俺と彼女は頭が良いから勉強はすぐに終わるし遊ぶ暇があるんだよ」


「ふーん。リムお兄ちゃんは、ガールフレンドと、いつ、どんなことしてるの?」プリシラは、特に何も考えず聞きたい事を素直に“兄のような”リムに聞いた。

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