第15話:プリシラの家のトイレとシャワー室

 一方、シャワーを浴びながら、プリシラは呟いた。


「私、何で、あんなバカとか意地悪言う、リムお兄ちゃんをいつまでも好きなんだろ。でも、格好良いし、なんだかんだ言って、今日だって疲れてるのに、私が楽しく勉強出来るようにしてくれるし、元々すごい優しいのよ。それはすごく分かるの。そこら辺の男子とは何か違うのよ。でも、バレジアのガールフレンドには、いつももっと優しくしてるのかな?デートとか何してるんだろう?バレジアの家では何してるんだろう?」


 その数分後、リムは、プリシラのために、理科のテストを面白く解けるように新しく作り直し終え、紙2枚を机の上でトントンと整えて、それを見て満足した。


「我ながら上手く出来たかな。これならあの、おバカシーラも80点は取れるだろう」


呟いた後、リムは、この家に来てからずっとトイレに行ってなかったからか尿意をもよおした。


「うっ、やだなあ。プリシラがシャワーしている時に。シーラ、早く上がらないかな?俺、我慢出来そうにない・・・・・・。隣がまだ俺んちだったらなあ」リムは1人で身震いした。


 プリシラの家のシャワー室は、シャワー室とトイレと洗面所はそれぞれ独立しているが、3つ全てが、鍵の無い手動のアコーディオンカーテンで廊下と仕切られて1つの場所に作られていた。


誰かがシャワー室に入っている時に、トイレに行こうとすると、その者がシャワー室に入っている者に、廊下から中に入っていいか聞かねばならない。洗面所を使いたい時も同じだ。


 リムは、それを考えて、嫌々廊下に出た。アコーディオンカーテンの前に立つとドキドキした。聞き耳を立ててみると、シャワーの音がしない。でもプリシラは体を洗っているかもしれない。


しかし、リムは我慢出来なくなり、苦虫を噛んだような歪んだ顔をして、股を押さえて、アコーディオンカーテン越しに、シャワー室のプリシラに向かって叫んだ。


「シーラ!俺、トイレ入りたいんだけど!」

母親達に聞こえるかもしれず恥ずかしい。しかし、ドキドキするより、嫌な気がするより、急に懐かしさを覚えた。引っ越す前は、この家に来た時、よくこんなことがあったものだと。


すると、中からプリシラの返事が返ってきた。

「もうすぐ出るけど、待てない?」

「待てないよ。そっちこそ、俺がトイレ入ってる間に出れない?今すぐ入るから」

「分かったわあ。良いって言うまでトイレから出ないでね?」

「分かったけど、早くしてよな。俺は無駄な時間は大嫌いなんだ」

「トイレにパパが読み捨てて行った新聞があるわよ」

「じゃあ開けるよ」

「うん」


そんなやりとりをして、リムはプリシラがシャワー室に入っている間に、アコーディオンカーテンを引いて中へ入り、またアコーディオンカーテンを閉め、トイレに入った。


「産経かブレジア新聞かと思ったのに農業新聞か。たまにはこういうのも勉強になるな。しかし、トイレは暑いな!シーラ、早く出ろよな」


そう呟いて、リムが新聞を開いて読もうとすると、プリシラがシャワー室のドアを開ける音がして、プリシラはドアから顔だけ出して、トイレの方に向かって言った。


「リムお兄ちゃん、まだ入ってるの?もう出れる?私も出るから」

「ああ、分かった!ごめんごめん!」


リムは農業新聞をそのまま借りて読もうと思って、ガサガサと急いで畳み、焦ってトイレを出ようとした。


「まだ?」と、プリシラは、恐る恐る体を手で隠して一度シャワー室の外へ出た。


「い、今すぐ!」


「キャー!リムお兄ちゃん、まだだってば!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る